2018年9月12日水曜日

観測隊/輸送の手引き

 わたくし昭和(*1)最後の生まれなので、誕生日過ぎると平成の年号=年齢になります。今なら平成30年だから、誕生日前は29歳、誕生日後が30歳という形。自分の年齢か年号を覚えておけばどちらかを保管できるのですが、来年からは平成が終わってしまうので不便になるなぁ、などと思っていたら今年の時点で年号覚えていたのに自分の年齢を間違えていた
*1) 30年くらい前はそういう年号があったという伝説がある。

 誕生日後に30歳になるのに、もうすでに30で誕生日後は31になると思っていました。書類書いてて指摘されて気づいた。危ねぇ。4月の誕生日会のときに「30になりました」と言ったような気がするので、半年近くは間違えていたような。南極にいてあんまり書類を書く機会がなくて良かった。

 さて、今日(9月12日)から1ヶ月間、みずほ基地とドームふじ基地の間にある中継拠点という場所に行く予定だったのですが、悪天候につき1日順延と相成りました。おかげでエクスペリエンスのホラーADV『死印』の続編『NG』(*2)が買える——と思いきやPS storeに出てこない。なぜだ。更新タイミングが日付変更ではないのか。
*2) ヤンキーが都市伝説を殴るADV。

 とりあえず1日時間ができたため、今回は昭和基地以外の基地について書きたい——と思ったけれど、どうせなら実際行ったあとのほうが写真があって良さそうな気がしたのでこちらも順延で。

 昨今第一便、託送便といった輸送の話があったため、今回は輸送に関して書きたいと思います。

 第一便というのは砕氷船しらせによって輸送した荷物のうち、優先して越冬隊員に届けたいものを昭和基地近くまで来てからヘリコプターで輸送するもので、12月下旬に日本から物資を少量ながら受け取ることができます。

 これよりも先んじてとなると、→観測隊/スケジュールでも触れたDROMLAN航空機があります。

→昭和基地NOW!!
2015年11月20日 思いがけないプレゼント

 ただしDROMLANによる輸送は個人の荷物はあまりありません。

 南極という、人間の居住圏からは大きく離れた場所に物を届ける主たる役割を担うのは、やはり砕氷船しらせなのです。
 というわけで主として砕氷船しらせでの物資輸送の流れを説明します。

 しらせでの輸送の流れを簡単に書き出すと、

  1. 梱包・計量・マーキング
  2. 物資集積、積荷リスト作成/提出
  3. 貨物入庫報告書作成/提出
  4. 埠頭倉庫での搬入・検数・立会/しらせへの積み込み

となっています。

1. 梱包・計量・マーキング


 観測物資にしろ、設営物資にしろ、私物にしろ、まずは物資を梱包して計量、そしてマーキングと推移します。
 物資は基本的にダンボールで輸送されますが、この際は後述の検数(および荷整理)のためにはある程度決まった荷姿(梱包)で望ましいです。そのため、一般にダンボールでの輸送では、小ダン/中ダン/大ダンというあらかじめ規定された3種類の荷姿で行われることが多く、特に中ダンが多く使われます。


 必ずしもダンボールで輸送する必要はなく、たとえば上の図ではスコップはダンボールに入らないため、裸(何もつけない状態)で輸送したりもします、また、輸送形態にはスチールコンテナ(スチコン)、12ftコンテナというものもあり、どちらもダンボール輸送に向かない大型のものを運ぶときに用います。どちらかというとスチコンは重いもの、12ftは大きいものに適します。
 
 が、それにしてもやはり便利なのが中ダン。ほとんどの物資はこの形で送られます。


2. 物資集積、積荷リスト作成/提出


 このように梱包した物資は基本的に極地研の倉庫に集積されるわけですが、港へ持ち込まれてしらせに乗せる前に、積荷リストというものを完成させる必要があります

 これは読んで字のごとく、しらせに乗せる積荷をリスト化したもので、物品名称や重量、容積はもちろんのこと、金額や積付場所、備考も書く欄があり、物資そのものの情報のほか、どこに積み込むのか、どこに送るのかなどを記載することになります。さらに物資の識別のため、このリストの情報から伝票を作るとともに物資に貼られます(下図でダンボールに貼られているのが情報を記した伝票)。



 大量の物資が船に乗せられますが、船上で使われる物資はごく一部で、大部分の物資には目的地があります。そのため、重要な要素である目的地やその緊急性については伝票番号の記号で分けるほか、梱包のガムテープでも色分けします。今回の場合、

  • 黄土色→昭和基地への通常物資
  •  赤 →昭和基地への優先物資
  •  青 →船上もしくは沿岸で使う物資

というように分類していました。


3. 貨物入庫報告書作成/提出


 積荷リストができたところで、今度は貨物入庫報告書というものを作ります。

 積荷リストはあくまでリストですが、貨物入庫報告書はその名の通り、物資が港の倉庫に入庫するときに使うものです。しかし積荷リストで基本的な事項はほぼ網羅しているため、積荷リストからそのまま貨物入庫報告書が作ることは可能です。


4. 埠頭倉庫での搬入・検数・立会/しらせへの積み込み


 ここまできたら、あとは埠頭での搬入・検数・立会が10月半ば、しらせへの積み込みが10月末〜11月頭に残すのみ。


 検数というのは検数協会という謎の団体に積み込み物資をチェックしてもらうことで、なんかよくわかりませんが厳格なチェックがあります。冬なので寒いです。南極よりこの時期のほうが寒かったな。




「輸送が終われば南極観測は半分終わったようなもの」という言葉もあり、それだけ輸送というものが重要なのですが、そのぶんだけやらねばならないこともあります。
 特に検数がある10月までの間、研究は進まず、論文は書けず、作業は進まず、3-4周回もできずという有様で大変でした。将来的にはヒュッと輸送できるようになればいいなぁ。

 本日は以上です。

© この星を守るため
Maira Gall