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2018年11月3日土曜日

隊員/車両越冬隊員の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は、

  • 南極での仕事 :何をするために南極に来たか
  • 南極に来た経緯:どうすれば南極に来られるか

に集約されています。


南極での仕事


 雪上車の整備。


南極に来た経緯


 所属している企業が雪上車の製造会社で、社内選考を経て参加することになった。南極に行けるからこの会社に入ったようなもの。
 あまり大きな選考というわけではなく、「行く? 2、3年後に行こうか? じゃあ準備しよう」というような流れとのこと。


南極の感想


 来てみたら想像と違った。
 ここは厳しすぎる。







管理人より


 設営部門、車両担当の方です。南極での車両は大きくわけて二種類で、ひとつは日本でも一般に使用されているようなトラック(装輪車)で、夏の作業時期に使用されています。もうひとつがキャタピラの雪上車で、夏の内陸観測と長きに渡る冬の輸送・観測・旅行活動に使用されます。この方の指す「車両」というのは後者です。

 現在の昭和基地にある雪上車は、PB300という海外製品が僅かにあるのを除き、大原鉄工所製です。なので車両担当の隊員は大原から派遣されてきます。逆にいえば、もし南極に行きたい場合、(毎年1人程度という狭き門とはいえ)大原に行くことが近道といえるようなそうでもないような。

 先日のみずほ・ドーム中継点旅行では3台の雪上車で向かったのですが、その3台がそれぞれエンジン関係のトラブルで走行不能な状態となりました。自分はわりとパラッパラッパーなのでヒートガンでチューブ温めるくらいしかできなかったのですが、この人は車両担当で真面目なので冷や汗どころではなかったでしょう。帰ってきたときには1.5kg痩せていたそうです。

「わざわざこんなに寒いところに来たがるなんて、研究者の方々はおかしいのでは?」としきりに言っていましたが、話聞いてみるとこいつも南極に来たがっていたんじゃねぇか。


2018年7月2日月曜日

隊員/気象定常観測越冬隊員の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は、

  • 南極での仕事 :何をするために南極に来たか
  • 南極に来た経緯:どうすれば南極に来られるか

に集約されています。


南極での仕事


 気象観測
 その中でも特に地上気象(温度計、風速計など)を担当。またS17の気象ロボット、雪尺観測なども担当している。

南極に来た経緯


 もともと地球化学科の研究室でフィールドワークに出た経験から、船関係の仕事がしたい、現場に出たい、いろいろな場所に行きたい、という理由で気象庁に入庁した。
 南極観測部に志願したのは、せっかくだから誰も行けないような場所に行きたい、という理由。

南極の感想


 南極はブリザードが吹き荒れ、非常に寒冷な気温となり、風が僅かな時間で大きく変わり、日本では体験できないような現象が起きるから、観測は面白い






管理人より


 南極の観測部門は基本観測と研究観測に分けられます。研究観測というのは基本的に研究者が属して各々の研究を行いますが、基本観測は定常観測やモニタリング観測といった、過去から継続して行われている観測を連続して行います。定常観測を受け持つのが気象庁職員で、越冬隊として5人来ています。今回紹介するのはそのうちのひとりです。

 気象庁の定常観測は単に観測してデータを取得するだけではなく、毎日の予報業務も受け持っており、毎日夕食後のミーティングでは、翌々日までのおおむねの天気や風速などを告知します。天気は言わずもがな重要な要素ですが、なんでもない日に秒速10メートルを、低気圧の接近に伴って秒速20メートルを、時には秒速30メートルを超える南極では、風速の予報は非常に重要で、外出禁止令や注意令も、気象の通報に基づいて行われます。

 今回は珍しいくらいまともな感想をもらいましたが、「地球化学科だったが入庁試験は物理だった」「そんなどうでもいいことは書かないでくれ」「南極では素晴らしい研究者の方々と出会えて光栄」「いやほんとほんと」などというコメントも並列していただきましたのであまり信用しないでください。理髪係なので二度髪を切ってもらいましたが、わたしは信用していません。

 ちなみに彼は先日、つまり南極に来ている間に第三子が産まれました。おめでとうございます。酷いブリザードの日だったため、仮称「ブリ男」という名前が勝手に他の隊員によって名付けられましたが、仮名が通らなくて何よりです。

2018年6月15日金曜日

隊員/重点研究宙空圏越冬隊員の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は、

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  • 南極に来た経緯:どうすれば南極に来られるか

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南極での仕事


 ライダー(レーザーレーダー。光を射出して大気の鉛直状態を観測する装置)の保守点検と観測。昭和基地に設置されているライダーのレーザーは気水圏のそれと比べると出力が大きく、世界で5、6台しか存在しない。出力が大きく、波長をチューニングが難しいため、マニュアルで調整しなければならない。

 また、ソフトクリーム係長としてソフトクリームの管理。

南極に来た経緯


 もともと宙空圏のライダーに関連したプロジェクトで雇われており、その流れで南極に来ることになった。明確にどの時点で決まったということはなく、完全に流れ。ライダー関係で人を出したいということになっていたため、いつのまにか決定されていた。実質、社内公募みたいなもの。

南極の感想


 変わり映えしない。






管理人より


 観測系編です。南極といえばオーロラとペンギンという印象を持っている方がほとんどだと思いますが、オーロラは宙空の領域です。

 宙空の主たる重点研究課題はPANSY(昭和基地大型フェイズドアレイレーダー)なのですが、PANSYの保守観測は三菱から選出される隊員が行うため、極地研からの研究観測隊員は保守観測を行いません。

 この方が使うライダーという観測装置は、単純にいえばレーザーを射出し、空中の大気や微粒子にぶつかって戻ってくる反射光(正確にいえば、後方散乱光)を観測することで上層大気の鉛直分布を観測する装置です。レーザーレーダーという名前からわかるとおり、基本的な概念はレーダーと同じで、大きな違いは使用する波長です。レーダーはいわゆる電波と呼ばれる長い波長を使いますが、ライダーは目に見える光に近い短い波長を使います。

 この方とは砕氷船しらせで同室だったので、道中に今回の記事の元となるインタビューを行いました。しらせでは近くにクジラやペンギンの群れやが見えると『十時の方向にペンギンの群れ。泳法はバタフライ』などといったアナウンスがあるのですが、その度に「観測に行かないと」と言って部屋を飛び出し、海氷が近づくと「ワッチ(船上での当直当番のような意味)だ」と飛び出して行ったのは記憶に新しいです。


2018年4月6日金曜日

隊員/多目的アンテナ越冬隊員の場合


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南極での仕事


 多目的アンテナの担当だが、現在は実質「単目的」アンテナで、Very Long Baseline Interferometer(VLBI; 超長基線電波干渉法)観測。VLBI観測は国際観測で他の観測地点と同時に超長距離の星から発せられる電波を観測し、各観測地点の位置の変化を測定する。昭和基地は南極での数少ない観測地点。

 また、本来の仕事とは関係ないが、通信や気水圏無人飛行機観測の手伝いも行う。ちなみに無人飛行機には特に必要ないが、飛行機免許を持っている。


南極に来た経緯


 多目的アンテナは毎年、勤めている会社から隊員を排出しており、社内公募。社内公募後の選定については詳しいことは話しにくい。

 社内公募は社内の人間なら誰でも応募できるものだが、無線の資格などが必要であった。今回は58次や60次と同時に採用されたため、2015年2月ごろに公募され、5月に決定された。

南極の感想


 寒い。






管理人より


 ここから越冬隊員の紹介です。全員紹介できたら良いなぁ。

 最初の紹介は多目的アンテナ隊員です。昔は「多」目的だったそうですが、現在はほぼ「単」目的アンテナ。昭和基地の東のほうに巨人用の黒いサッカーボールのようなものがあるのですが、それがアンテナのレドーム(覆い)です。
 現在唯一のアンテナの仕事であるVLBI観測は、本文中でも説明があるように、非常に遠くにある星から発せられる電波を地球のさまざまな地点でほぼ同時に受信することで、各観測地点の位置の変化を観測するミッションです。「ハワイは日本に徐々に近づいている」だなんて話を聞いたことがある読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、そうしたことがわかるのもVLBI観測の恩恵です。詳しい説明については国土地理院のページで解説されているので、そちらをご覧ください。
→VLBIとは|国土地理院(http://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/vlbi-about.html)

 この方は多目的アンテナとは無関係に通信業務などにも出張しているのですが、気水圏(大気などの観測系)の無人飛行機の観測も手伝ってもらっています。管理人が気水圏担当の研究員なのでお世話になっており、越冬隊員トップバッターなのはそういう理由だったりします。ありがたやありがたや。操縦も通信系統もやってもらっており、この方がいないともう飛ばせない有様です。

 本文中にもあるとおり、飛行機免許持ちとかいうわりと意味わからねぇスペックです。大学の頃にカナダで取ったそうで、国際民間航空機関(ICAO)という国際協定に入っている国なら、国土交通省に申請して免許書き換えをすればその国で飛行機を飛ばせるとのこと。
 なぜ飛行機免許を取得したのか訊いてみましたが、返答は「かっこいいから」でした。

 それと、この方もブログをやっています。最近よりもい関係の記事を書いて大量に訪問者が増えたとのことなので便乗して宣伝しておきます。

→第59次南極地域観測隊 越冬隊員の記録(http://jare59.starfree.jp/index.htm)


2018年3月12日月曜日

隊員/気水圏夏隊同行者の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は、

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南極での仕事


テーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』に関連した、砕氷船しらせ船上でのエアロゾル観測機器の保守点検および観測。
また、自分の観測としてガイガーカウンターの放射線観測、太陽アナレンマ(同じ時刻の太陽の位置を追っかけていくと位置が徐々に変わる現象)の観測、空の色の観測。


南極に来た経緯


学部のときの指導教官が前次隊の夏隊で参加しており、そのつてでテーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』の担当者から、2016年12月に今次隊の参加者を探している旨のメールがあり、二つ返事で引き受けて参加することになった。

南極の感想


一言では言えない。
昭和は想像以上に監獄だ。





管理人より


 二人目。大学院生です。若いねー、とか言いだしたらおっさんなので気をつけてください。でも若いとほんとに元気だよな。うむ。カメラが好きなようで、なんか高そうなカメラ&レンズを持っており、観測用にカメラを持ってきたカメラ初心者の自分はいろいろと教えを請いました(でももう忘れた)。

 前回の→気水圏夏隊同行者の場合と同様、彼とも一緒に野外に出かけました。ちなみにこの記事はそのときにインタビューした内容が元だったりします。

 来た経緯については非常にわかりやすい部類で、大学のときの指導教官が南極観測の関係者だったのでしぜんと観測隊に繋がったパターンです。大学生・大学院生で南極に行く場合はほぼこのパターンなのではないでしょうか。ただし大学→大学院のときに学び舎を変え(理系ではよくある)ていて、現在の指導教官ではなく前の教官、というのはちょっと変化球かもしれません。

 ちなみに感想の「想像以上に監獄だ」ですが、えっと、二夏の狭さについて言及しているのか、トイレすら過酷な二夏のことを言っているのか、はたまた二夏のことなのか、いったいどれのことなのでしょう。

2018年3月1日木曜日

隊員/気水圏一般観測研究夏隊員の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は

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南極での立場

一般観測研究(気水圏)の夏隊員。

南極での仕事

テーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』に関連した、砕氷船しらせ船上でのエアロゾル観測機器の保守点検および観測。
自分の観測としてエアロゾルインパクターを用いたエアロゾルの粒径ごとの存在の観測。


南極に来た経緯

2017年3月にテーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』の担当者から公募があり、闇会員となっているエアロゾル学会からのメールで公募の存在を知った。公募には期間や業務内容などが詳しく書いてあった。
実際に応募してみると、他に応募者がいなかったせいか、面接・試験等は特になく、すぐに採用されたものの、南極に行っている間の仕事を休むための手続きで5月までかかった。


南極の感想

予想以上に天候や気象条件が厳しく、想像していたよりも天候に左右される部分が多かった。
それと、こんなに料理をすることになるとは思わなかった





管理人から


 一人目。(今回の観測隊の中では)平均ちょい若めくらいの年齢の方です。夏隊員なので現在はしらせ乗船中で帰還中。ちなみにこの記事を載せていいかと許可を取りにメールを書いたら、律儀にしらせ船内の状況も報告してくれて面白かったです。「表面上はとても平和です。僕が知る限りはですが」とか。

 大学はエアロゾル関係(南極で行った観測内容)を学んでいたそうですが、現在はそれとまったく関係ないお仕事をやっています(*1)。それなのに観測隊に参加することになったのは、学会の「闇会員」だったからか。いちばん大変だったのは観測隊への参加ではなく、いかにして仕事を休むかだったようです。
*1) ちなみにエアロゾルというのは大気中の微粒子のことで、いろんな種類のものがそこらへんに浮いているのだけれど、日本で特に話題になるのは黄砂。

 S17に一緒に観測に出かける機会が多かったのですが、ご飯当番に指名されてしまったがために毎日メニューを考え、ご飯を作ってくれました。家ではほぼ料理はしないそうです。

 南極に来た理由に「奥さんから逃げてきた」と冗談めかして言っていましたが、えー、なんだ、これで終わりです。



© この星を守るため
Maira Gall