2019年3月7日木曜日

観測隊/観測隊の装備品


 帰路です。20日が経過しましたーーとこの記事を書き始めたとき書いていたのですが、書き出しだけ書いて完成させないうちに一ヶ月が経っていたぜ。

 前回の記事で「船で何もすることがねぇので映画見てるぜ」という言葉に恥じず、毎日1.6本くらいのペースで映画を見て、『戦艦シュペー号の最後』(*1)でシュペーの船長が「戦艦も女の子と同じだ、服装を変えて変身する」というセリフを聞いて「確かに昨今は特にそうだなぁ」と思っていたりしています。生まれる以前どころか前世だった頃の映画だけど、まったく古臭さがなくて良かった。
 あと有名どころだと『ズートピア』とか『ラ・ラ・ランド』とか良かったのですが、有名どころを単純に面白いというのはなんか癪です。
 ほかに書きたいことだと、奇跡のコラボでレンタルコーナーの返却棚に『リンカーン』『リンカーン/秘密の書』『リンカーンVS.ゾンビ』(*2)が並んでいました。
*1) 1956年の映画。イギリス映画だが、イギリス海軍とドイツ海軍の戦いを、三隻の巡洋艦と戦ったドイツ海軍の豆戦艦アドミラル・グラーフ・シュペーを中心に描く。
*2) 『VS. ゾンビ』をこのとき返したのがわたしです。

 そんなわけで海戦映画を観たから今回は船のことを書こうかと思ったのですが、前回書いたような。何書いたっけ。そもそも書いたっけ。何を書いて何を書いていないのかわからなくなってまいりました。ネットに接続できないので調べられず。
 とりあえず間違いなく書いてないことを書こう、ということで今回は観測隊の装備品について書きます。恒例のごとく出だしはまったく関係なかった。

 日常的に使用する物品や使用頻度の多い物品については、隊員個人で持ってくることになっていますが、南極の厳しい環境に耐えるための防寒着や一般的な必需品といったものは支給されます。これらは個人装備ということで南極に出向く前の全員集合の際に配布されます。
 一方で実際に南極に到着してから使用するであろうコンロやテントといった品々は、共同物品ということで観測旅行に出発する前に(あるいは日本で)準備されます。


 今回紹介するのは個人装備についてです。

□個人装備

個々人に事前に配布される個人装備ですが、その内訳はその隊員が越冬隊か夏隊か、隊員か同行者かで異なります。当たり前ですが、越冬隊ほど寒冷環境に適した装備となります。具体的にどんなものが配布されるかは隊次によって異なりますが、59次での個人装備はこんな具合でした。

—貸与されるもの

・羽毛服、冬用アウター
 極寒の南極に耐えうる外套は個人装備として支給されます。観測隊に支給されるだけあって羽毛服は非常に暖かいもので、-50度の環境であっても耐えうるものです。少なくとも數十分であれば。


・ダッフルバッグ、ザック
 ザック類も支給されます。ダッフルバッグは船から基地への移動や野外活動で活躍しますが、ザック類は野外活動がなければさほど使用しないかもしれません。

・ヘッドランプ、コンパス
 コンパスはあまり使用する機会はありません。ルート工作をするにしてもハンドベアリングコンパスという専用のコンパスがあります。視程が悪いときを想定するにしても、ブリザード下では外出注意・禁止令が出されるうえ、万が一の想定外のブリザードがあったとしても、通行するような場所はライフロープが張られているため、よっぽどのことがない限りはコンパスの出番となりません。そもそもそういう状況になったらコンパスあっても死ぬ気がする。
 一方で大活躍なのがヘッドランプ。人間のほとんどいない南極、外灯の数は少ないばかりか、夜間のオーロラ観測のための灯火管制というものがあります。この期間は夜間、外灯が完全に消されるだけではなく、基地からも明かりが漏れぬようにとすべてのカーテンが閉められます。こうなると、手を伸ばした先に何があるのかもわからなくなるほど。ヘッドランプなしには出歩けません。

—支給されるもの

個人装備品は国から支給の南極観測経費で賄われています。そのため、本来はすべてが貸与というのが望ましいのですが、回収しても再利用ができなさそうなものや消耗品は支給という形にしています。

・夏用アウター、ヘルメット、目出し帽など一般的な防寒着
 羽毛服ほどには分厚くない、しかし日本で使うなら十分すぎるような冬用の防寒着は、夏作業で油仕事やコンクリート造りなどを行うこともあり汚れやすく、支給品となっています(羽毛服も人によってはすごく汚れるのですが)。

 夏作業に不可欠なヘルメットなども支給品。基本的に夏期間の昭和基地はほぼ工事現場であるため、外出時のヘルメット着用が義務付けられています。


 野外活動ではヘルメットを身につける必要はありませんが、外に出ると気になるのが強い日光。こんなときに役立つのが、銀行強盗するときにしか使わないような目出し帽ですが、これも支給品です。ほか、防寒帽やネックゲーターも支給品です。

・長靴、安全長靴、防寒靴
 夏にしろ冬にしろ、昭和基地でも野外でも、通常の靴を履く機会は滅多にありません。雪積もり固まる冬の間はもちろんですが、岩や砂が露出する夏期間も長靴の系統を履くことになります。 
 この理由としてはおおむね二つあり、ひとつは露岩帯や工事現場で足を怪我しないようにするためで、鉄板入りの安全長靴のほうが安全なため。
 もうひとつの理由は濡れても問題がないため。昭和基地では建物内に砂を持ち込まないよう、建物前には水をためた容器が置かれており、これで靴の底を洗うようになっているため、長靴以外では都合が悪いです。


・手袋
 当たり前ですが、南極で手袋は必須です。
 支給品の手袋は適したものが揃っていて、特に内陸旅行に行くとなると日本で一般に売っているような手袋など役に立たないのですが、冷凍庫用の手袋は寒冷化での使用にも耐えうる一品です。さすがに冬の内陸だとそれでも寒いので長時間活動はできませんが。


・靴下
 指先は凍傷を負いやすい箇所ということや、毎日装着し続けるものであることもあってか、他の支給品よりも多めに支給されます。今回は6足でした。
 支給される靴下は山岳用のもので、具体的にどのへんが山岳用なのかはまったく詳しくないためわかりませんが、とりあえず厚くはあります。

・十徳ナイフ
 十徳ナイフといえばスイス製ですが、支給された十徳ナイフがスイス製だったかどうかは忘れました。スイス国旗ってどんなんだっけ。


 現場でよく使ったのは、まずはナイフ。段ボールを開けたりビニールテープを巻いたりといったほかに、タイラップを切ったり果物を剥いたりなどにも。缶切りやコルク抜きなども便利で、もちろん専用の道具があるに越したことはないのですが、とりあえず胸ポケットにひとつ入れておけばさまざまな用途に使えるものがあるというのは便利なもので、かなり重宝しました。人によってはまったく使わないそうですが。

・日焼け止めクリーム、リップクリーム
 雪面による反射により、強い日差しを受けることになる南極では、日焼け止めクリームやリップクリームは必需品です。
 日焼け止め類は支給されはしますが、たいして外出しないならともかく、長期旅行に耐えうる数ではありません。野外で活動する場合は自分でも持ってくることをオススメします。

・サングラス、ゴーグル
 同様にサングラスも必需品ゆえに支給品。近視などを持っている場合は度入りサングラスも選べますが、この場合は私費がかかります(全員集合のときに検査ができます)。
 強いブリザード下ではサングラスに雪が張り付いたり、曇ってしまったりで役に立たなくなることが多々ありますが、そのような場合ではゴーグルが役立ちます。これも必需品です。個人的にはあまり使いませんでしたが。


自分で持ってきたほうがよいもの

もちろんのこと、支給品だけでは日々の生活は不十分なわけで、自分で持ってきたよいものもあります。

・下着・肌着類
 パンツは履きましょう。

・コップ
 食堂にはカップが十分数ありますが、食事時だけではなく日々の生活で利用することを考えれば、コップは間違いなく持ってきたほうが良いでしょう。しらせにも基地食堂にも電子レンジがあるため、電子レンジ対応のものが望ましく、また、船内では揺れが激しくなる場合があるので、蓋付きのものがオススメです。


・テーブルタップ
 日本のように電力使いたい放題、とはいかないものの、常識的な使い方(PCの給電や携帯の充電など)であれば不足はしないでしょう。しかしながら、船内でも基地でも基本的にコンセント孔は2口しかないため、あなたが電力に頼らないゴリラでない限りはテーブルタップは持ってきたほうがよいでしょう。

・洗濯ロープ
 基地にはある(らしい)うえに、管理棟連の居住棟居室であれば洗濯に使える物干しのようなものが備え付けてあります。しかししらせや夏用住居には洗濯ロープはありません。しらせは乾燥機が使えるため、洗濯物を干さなくても生きていけますが、それ以外の場所で服を着るタイプの性格の方はロープは買っておきましょう。ちなみにハンガーは比較的数があります。


・運動靴、運動着
 支給品の項で「普通の靴は履く機会はほとんどない」と書きましたが、数少ない例外は運動時です。さすがに長靴でランニングはできません。日頃、運動をしないようなインドアな人々でも、南極に来ると頭がどうにかなって走り出したりするものなので、あまり運動する習慣がない方でも持ってきておいたほうがよいです。運動に適した服も。

・置き時計
 PCだの携帯だの、どこでも時計がついていますが現代、それでもやはり置き時計のひとつでもあれば便利です。まぁ腕時計でいいといえばそのとおりなのですが、腕時計って時間調整が難しかったりしませんか? 特に船で移動中は時刻帯変更が多いのに。置き時計ならだいたい見ればわかるんだけど、これどうやるんだっけ、何回かやったことはあるんだが、うーむ、Citizenの2ボタンの腕時計の時刻調整方法知っている方がいたらご連絡ください。


 これ以外にも、嗜好品などはもちろん自分で持ってくる必要がありますし、ブーメランなど個人的に必要な物品は自分で持って来る必要があります。本日は以上です。

2 件のコメント

  1. 宇宙よりも遠い場所から来ました。バックナンバー読んできます!

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    1. はるばる遠いところからお越しいただき、ありがとうございます。
      書いたら書きっぱなしの状態なので、そのうち整えます。

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Maira Gall