どうやら寝る前に洗濯物を畳んでベッドの上に置き、それを忘れたまま寝たようです。それ自体はわりとよくあるのですが、今回は衣服が綺麗に畳まれた状態を保ったままだったので、新たなシーツが誕生したのかと思いました。脳は正常です。
さて、ミッドウィンターが終わり、極夜も明け、忙しい時期が続いているわけですが、極夜の間にミッドウィンター祭以外に集中して行なっていることがありました。
それは南極教室と呼ばれる、日本の学校とビデオ接続して昭和基地を紹介する情報発信広報活動です。
また、南極中継と呼ばれる、学校に拘らない場所との中継もここのところ行われています。先日は静岡の静岡科学館科学茶房と中継があり、出演させていただきました。
こうした活動は特に極夜時期のみ行っているわけではありませんが、極夜の期間は外での活動が少なく、逆にいえば他の時期は観測・設営活動に精を出さなくてはならないため、しぜんとそれ以外の活動がこの時期に多くなるわけです。
今回はこの情報発信について書いていきたいと思います。
さて、まず南極観測隊からの情報発信としては、主として3種類のルートがあります。
- 南極本部または国立極地研究所が発信元となって行うもの
- 同行記者による取材
- 隊員個人のSNS等による情報発信
1) 南極本部または国立極地研究所が発信元となって行うもの
南極本部や極地研が公式に発表するものですが、
- 重要な情報に関する報道発表
- 公式ホームページでの発表・個別の機構及び雑誌等への定期掲載
- 南極教室・南極中継・南極授業
が主としてあります。
重要な情報に関する報道発表というと、たとえば南極の氷床下に埋まっていた謎の遺物を掘り返したことで目覚めた物体が隊員たちに寄生して暴れまわり始めた、だとかが思いつきますが、それ以外にも、昭和基地に接岸した、というような毎年行われることでも重要な情報として報道発表に回されるものもあります。
注意点としては、これらの報道発表する予定の情報は、報道発表が行われるまえに(後述するSNSなどで)個人で発信してはいけないということです。発信自体は可能ですが「先にしてはいけない」のです。
実際に個人で発信した場合にどうなるかは伝えられていませんが、たぶん昭和基地引き摺り回しに処さるか鋸引きだと思います。なのでThe thingとかブリザーガ、ジャムなどが迫っている状況で自撮りして「昭和基地壊滅なうw」(*1)となどとTwitterに投稿することはできず、隊長から極地研へ、極地研から南極本部へ、本部から報道機関へ、機関から公表されたのを確認してからようやく投稿できます。
*1) そういえばなうって聞かなくなったな。
公式ホームページでの発表や個別の機構及び雑誌等への定期掲載に関しては、どちらも極地研広報室を通して行われます。公式のものとしては、
→南極観測のホームページ
→昭和基地NOW
です。ここに隊員が記事を寄稿する場合、基本的には極地研広報室から隊長・庶務経由で依頼があり、隊員が執筆、隊長・庶務に戻してから広報室を通って掲載されます。
これ以外の媒体に掲載される場合でも基本的にこの流れは同じで、極地研広報室を経由してもらわないと掲載はできません。なので依頼がある場合は一度極地研へ打診してもらい、そこから南極本部で検討したのちに依頼を受けるかどうかが決定されます。
南極教室・南極授業・南極中継はTV会議システムを利用したリアルタイムでの中継システムです。
「南極や昭和基地のことを紹介する」「リアルタイム中継である」「一般の人間に向けて発信する」といった点は共通ですが、違いとしては以下の通りです。
場所 | 対象 | 主たる発話者 | 時期 | |
---|---|---|---|---|
南極授業 | 派遣教員の学校 | 学生 | 派遣教員 (夏季同行者) | 夏 |
南極教室 | 隊員に関連した学校 | 学生 | 越冬隊員 | 越冬 |
南極中継 | 科学館 サークル会場など | 団体関係者 参加聴衆など | 越冬隊員 | 越冬 |
上の表の通り、南極教室と南極授業は、場所が学校であり、対象が学生であるという点は共通です。違うのは夏隊同行者である現職派遣教員によって行われるか、それとも越冬隊員によって行われるかという点です。
南極授業のほうは、夏時期は外に観測に行っていることが多かったのでよく知りませんが、南極教室は相当のコストをかけて行われています。具体的には、
- ビデオカメラなどの本格的な機材を用いての中継
- MCのほか、ディレクターやタイムキーパー、AD、照明係の存在
- ちゃんと台本がある
などです。対象が若い学生だからかしっかりしていますが、そのぶん自由度が低いというか、枠がきっちりしすぎている感がないでもないです。
一方で南極中継はというと、こちらは、
- iPadなどを用いた簡易的な中継
- 大型機材を使わず、授業でもないので最低限の人数で可能
- 台本がない場合があり、MCの裁量が大きい
といったところ。
上のように書いてしまうと、中継のほうはものすごくいいかげんにやっているように聞こえてしまいますが、最低限の人数で簡易的な装置を使うということは動きが軽く、コードという物理的な制約のあるビデオカメラでは行けない場所、たとえば外の広場から中継を行うこともできるということです。
また、台本がなくMCの裁量が大きいため、時間の使い方も中継先の状況や実際の進行に従って決めることができ、内容もそれぞれの開催場所に合わせて決定することができます。南極教室はある程度の大枠が決まっているため、何度も見る人がいたら途中で飽きられてしまうでしょう(*2)。そういうわけで、個人的には南極中継のほうが好きです。楽だし。
*2) 「おれは南極教室のために各地の小学校を転々としているぜ」という小学生20年のプロの南極教室リピーターだとかには。
2) 同行記者による取材
過去には日本新聞社から派遣された同行記者が観測隊に加わっていたことがありました。しかし今回の59次隊では派遣記者はいないので、この「同行記者による取材」がどんなものなのかはよくわかりません。
ただし今回は「企画提案取材」というメディア関係者の取材による採択枠があり、NHKからの同行者が2人採択されていました。過去の記録を見るとNHKはしばしば昭和基地を訪れ、取材を行ったり、送受信設備を建設していたりしたようです。
3) 隊員個人のSNS等による情報発信
観測隊員による個人的な情報発信も認められており、本ウェブログ『この星を守るため』もそうした個人情報発信のひとつです。
さて、個人の情報発信については3つの規制があり、それは、
- 未公表の公式情報を扱わない
- 開設しているHP等のアドレスを隊長・情報発信、広報室に告知する
- 公序良俗に反したり、観測隊の名誉を傷つけてはいけない
というものです。ちゃんとこれに従っているかどうか見てみると、
・未公表の公式情報を扱わない
→そもそも時事ネタをそんなに扱っていないうえに、何かが起きてから記事にするまでが遅いので未公表の情報がない。
よし、大丈夫。
・開設しているHP等のアドレスを隊長・情報発信、広報室に告知する
→航行中のHPを確認し難い時期とはいえ、通達した。
よし、大丈夫。
・公序良俗に反したり、観測隊の名誉を傷つけてはいけない
→
本日は以上です。