2017年12月31日日曜日

その他/宇宙よりも遠い場所


 昨日12/30までS16という氷床上の拠点に観測で出向いていました。


 その間にも砕氷船「しらせ」は進んでおり、昭和基地のすぐ近くに接岸しました。おかげでインターネットが開通したわけですが、まだだいぶ回線が細いです。なので「しらせ」乗船中にメール投稿をしていた記事の改稿は1月中頃に持ち越したいと思います。ちなみに乗船中に投稿していた記事は以下の4つ。

→観測隊/オーストラリアでの行事(http://jare59.blogspot.jp/2017/12/blog-post.html)
→観測隊/砕氷船しらせ(http://jare59.blogspot.jp/2017/12/blog-post_8.html)
→観測隊/日本南極地域観測隊の歴史(http://jare59.blogspot.jp/2017/12/blog-post_11.html)
→南極/環境保護条約(http://jare59.blogspot.jp/2017/12/blog-post_20.html)

 さて、本題。インターネットが開通したのでメールを確認していたら、『宇宙よりも遠い場所』という南極を扱ったアニメの宣伝メールが来ていました。

 現状、インターネット接続が非常に重く、そもそもあんまり使うなと言われているので公式サイトまでは確認できないのですが、ググった限りではとりあえず略称は『よりもい』で放送時間としては、


  • AT-X:  1月2日 毎週火曜 夜8時30分~
  • TOKYO MX:1月2日 毎週火曜 夜11時00分~
  • BS11:  1月2日 毎週火曜 夜11時30分~
  • MBS:   1月9日 毎週火曜 深夜3時00分~


となっているそうです。テレビ日頃見ないのでこの略称がようわからん。

 内容に関してですが、砕氷船「しらせ」の公室サロンにポスターが貼ってあって、「なるほど女子高生4人が南極に行くのだな」ということは理解できるのですが、具体的な内容までは予想できません(*1)。
*1) いやまぁ、一般受け狙うのならたぶん「ペンギン」と「オーロラ」が中心になるんだろうけど。

 そもそもゲームに関しては重度のオタク(*2)なのですが、アニメってほとんど見ないのですよね。ここ十五年で『ラーゼフォン』、『Gガンダム』、『タイガー&バニー』(1期)、『グレンラガン』(劇場版)、『君の名は』くらいしか見ていない(*3)。なので昨今のアニメの自然な流れというものが予想できない。
*2) 『汝は人狼なりやいなや』のクローンを未明までぶっ続けでやって独語の授業中に鼻血を出したり、5年くらい前に終わった海外デジタルカードゲームのストーリーの翻訳を延々やっていたり、PCゲームのリプレイをだらだらやっていたりする。
*3) なので『君の名は』を見ても、「いや、Remember11プレイ済みだし……」という感想しか出なかった。

とはいえ、初めての南極でわずかな期間とはいえ、氷床斜面上の観測拠点でその一端を体験したわけです。それならば、きっと『よりもい』の展開も予想できるはず。

 というわけで放送が始まってしまうまえに、『よりもい』の展開やありそうな要素について予想していきたいと思います。


[1] 主人公たちは南極に強い関心や憧れを持っている
 これはまぁ当然でしょう。研究者であればそうとは限らないかもしれませんが、そうではないなら南極という一種の閉鎖空間へわざわざやってくるのですから、何かしらの理由があるはずです。たいして給料が良いわけではない(というか会社から出向してくる人の場合、普通は下がるらしい)のですから、その理由は精神的・心理的なものであるに違いありません。


 つまり単純に「行きたいから」という願望を持っているはずなわけですが、「なぜそんな願望を持っているのか」という描写はどうするべきか。わかりやすいところでは、親類縁者に南極経験者や寒冷地に関係した人間がいて話を聞いて憧れを持つようになった、なんていうのが良さそうです。


[2] 高校は中退している
 なんかいきなり怪しくなったぞ。大前提を覆すようですが、女子高生が女子高生の身分のままで南極観測隊に参加することは難しいでしょう。万が一参加できても同行者(隊員ではない)のはずで、現行のシステムがどうなっているのか詳しいところはよくわかりませんが、参加は夏期間に限定されてしまう可能性が高いです。しかし夏では明るすぎて、推しの要素であろうオーロラ回をねじ込めない。

 となると、高校を中退させて越冬隊員として参加させるのが適当な気がします。中退してしまったら「女子高生」ではありませんが、まぁ元女子高生ということでひとつ妥協してもらうしか。


[3] 登場人物にアイヌの末裔とロシア人がいる
 南極は当たり前ですが寒いです。ゆえに重装備——かというと実はそこまででもありません。しっかりとした南極用の服を着ている前提ですが、日差しのある夏の期間であれば暖かさを感じるほど。特に労役……じゃなかった労働をしているときは身体も温まってくるので、上着を脱いで普段着のような格好で動くこともあります。

 もちろん風が強い日は、冷たい空気が体温を奪うとともに吹き付ける雪粒が身体を冷やしていくため、十分な装備が必要です。とはいえ常に風が強い日ばかりではありません。雨の日があれば晴れの日もあり、夜があれば昼もあるのです。

 であるからして、物語全体を通しての脅威は日差しであるはずです。夏季は常に中空で輝く太陽は、直接照りつける陽のみならず60-99%という高い反射率を持つ雪氷面で跳ね返されて、上下からその影響を与えてきます。可視光は雲である程度遮られることもありますが、特に肌や目に影響の大きい紫外線はあまり防がれません。そういうわけで、南極では日焼け止めクリーム・リップを塗ったうえでサングラス+目出し帽(もしくは帽子とネックウォーマー)といった格好が普通です。実際、自分が観測拠点にいるときはそのような格好をしていました(下の写真のような。下の写真は自分ではないですが)。


 しかしながら、これではキャラごとの区別がつかない。みんな銀行強盗のような格好をすることになります。ひとりが目出し帽、ひとりが帽子+ネックウォーマーとしても、あとのバリエーションはどうするか。ここは民族的な格好に頼るとしましょう。

 というわけで、4人の主要人物のうち、寒冷地に適した民族衣装のあるアイヌとロシア人がいてそれらしい格好をしていると予想します。


[4] 全員屈強なマッチョだ
 当たり前ですが、南極は雪との戦いでもあります。

 今回自分が行って来た場所はS17という観測拠点で、ここは基地でもないのに建物があるという珍しい場所なのですが、ここも最初に行ったときには天井まで雪に埋まっており、最初に扉と吸気・排気口のところを2m近く雪を掘るという労働をしなくてはなりませんでした。


 また、南極は非常に風の強い大陸なので、観測装置を置くときは風に負けないようにしなくてはなりません。主な対策は雪の中に埋めたり、雪の中に台を組んだりして安定させることで、そのためにもやはり雪を掘る必要があります。

 降雪地域に住んでいる方であればご存知でしょうが、雪を掘るというのはそれだけでも重労働です。しかしながら南極の場合、さらに面倒なこととして「一度降って固まった氷の層がある」というのもあります。今回の地点だと0.8mくらいでスコップがなかなか通らず、その影響で最終日には中央の芯の部分にヒビが入ってしまったくらいです。

 そんな重労働、単なる女子高生ではなかなかこなせないはずです。であれば、全員屈強な肉体を持っているはずです。



[5] ヘリオペがキャンセルになったために座って茶を飲んでいるだけの回がある
 夏の間、沿岸から大陸に少し入った程度の場所であれば、基本的にヘリコプターで移動します。しかしながら航空機は悪天候に弱く、特に雲が出たり、地吹雪で地表面の状態がわからなくなると発艦せず、予定のヘリコプターオペレーション(ヘリオペ)はキャンセルされることとなります。この結果として、観測に出られなかったり、逆に観測から戻ってくる日が遅くなったりということも珍しくありません(*4)。
*4) なのでそれを前提にして装備・食料は持っていく。

『よりもい』はしっかりと南極のことを研究したアニメのはずです。であれば現実的な風景として、ヘリオペのキャンセルに見舞われて何もやることがなくなり、ただ茶を飲むだけの回もあるはずなのです。


[6] 水着温泉回の代わりに耐寒訓練回がある
 耐寒訓練については詳細は伏せるので、耐寒訓練は身近な南極観測隊経験者の方に訊いてください(*5)。
*5) 身近にいない? じゃあ砕氷船「しらせ」の乗船経験のある海上自衛隊員でもいいや。


[7] 途中から麻雀アニメになる
 プロジェクトXの南極観測隊特集では、第一回南極観測隊の越冬隊は途中からやる気なくして麻雀やってたという話だったので、女子高生もそうなるはずです。ちなみに自分は麻雀のルールは知りません。


 以上のことから想像されるあらすじ。

===
 伝説のマタギの祖父に育てられた寡黙な女子高生・健造は氷雪地域への憧れを胸に、高校を退学後に隊員として南極観測隊の越冬隊に参加する。船酔いに苦しみながらも、砕氷船・しらせでは強い男を求めるアイヌの末裔・永吉、ロシアからの交換科学者にしてコマンドサンボの使い手セルゲイ、孤高の山猫スナイパー尾形百之助*6)ら女子高生と交流を持つ。

 耐寒訓練などの試練を潜り抜けたのちについに南極大陸に到着、観測拠点のひとつであるS17において観測を始めようとした健造であったが、建物があるはずの場所にあったのは巨大な雪の塊であった。来る日も来る日も雪を掘り、ついに建物内に入れるようになって本格的な観測できるようになった健造であったが、観測装置を設置するにあたりまたしてもお肌を気にしながら雪を掘らざるをえなくなった。秒速20mを超える強風の中でも雪を掘り続け、ついに観測装置の設置に成功した健造。あとは帰りのヘリコプターを待つだけであったが、悪天候のためヘリが飛び立てない無線通信が入る。

 果たして健造ら4人の女子高生は基地へと戻れるのか!? 基地に戻ったとして設営作業は手伝えるのか!? よしんば夏をうまく過ごせたとして、越冬期間に入ってから観測装置が壊れ、やることがなくなって麻雀を始めたら止まらなくなってしまい、社会復帰ができなさそうだが大丈夫なのか!? うきうき女子高生南極物語はっじまーるよー♪
===
*6)ゴールデンカムイの12巻(Kindle版)の発売日っていつだっけ。

 以上です。だいたいこんなあらすじだと思うので、『宇宙よりも遠い場所』略称よりもいをよろしくお願いいたします。

10 件のコメント

  1. OPで転がる太陽が描写されています。が、左から右に移動してました。EDロールに「協力:極地研」と書いてあったのですが、どうなんでしょう?

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    1. コメントありがとうございます。極地研、南極観測統合推進本部(文科省海洋地球課)、海上幕僚監部(防衛省海上自衛隊)が協力と聞いています。
      北半球だと太陽の動きは東→南→西なので(太陽が見える方向である)南を向いていると左→右に動きますが、南半球だと東→北→西なので北を向いていると考えれば右→左ですね。
      宣伝しているくせにブツを見てないので話がどういう状況なのかわかりませんが(主人公はもうセルゲイと一戦交えましたか?)舞台が南極に行ったらOPが微妙に変わって逆になるのではないでしょうか。

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  2. 最初に投稿した者です。3話OPから、転がる太陽、右から左に移動してました。(鏡像処理っぽいです)なお、わたくし、以前にJARE55越冬オーロラのYさんと何度かお話させていただいたことがあります。(南極ネタも他も)

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    1. 右→左になったようで何よりです。アニメもそろそろ3話だか4話だかだと思うので、きっと主人公たちも昭和基地で生コン練ったり、鉄筋編んだりしているのでしょう。今後ともよりもいをお楽しみください。

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  3. はじめまして。

    そのアニメに関連したラジオ 「ラジオ 宇宙よりも遠い場所~南極よりも寒い番組~」
    http://www.onsen.ag/program/yorimoi/
    2/15更新回(第7回)でこちらのサイトが紹介されましたことで訪ねてみました。

    アニメ本編の方は、2月15日の時点で漸く観測船のいるオーストラリアのフリーマントル(寄港地の設定)にて、主人公たち女子高生(4人のうち1人は中退、3人は休学という設定)が船に乗り込んだ所です。 
    その回の最後は船上で出陣式をした所で終わり、次回南極に向けて出航となります。

    予想される展開については、まだ少し先の話になりそうですね。 先の展開は楽しみです。

    追伸
    私もOPの太陽の動きについて違和感を感じていたのですが、その理由がわかった事は何よりでした。

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    1. コメントありがとうございます。まさかこんなアレなブログが紹介されていたとは。ありがとう、健造、ありがとう、ゴールデンカムイ。
      ブログいじるのが面倒でまだ載せていませんが、先日アニメ1-4話を観測隊@昭和基地で観る機会があり、Twitterで感想(というかツッコミ)を呟かせていただきました。
      https://twitter.com/jare_59/status/964197124207345664

      南極ではきっと肉体労働に目覚めて屈強な女子高生になってくれるでしょう。ちなみにわたしは今日はコンテナヤードという12トンのコンテナがたくさんある場所でそれらをドラム缶の上に積むという、聞いただけではわからないような作業をしていました。

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    2. 間違えた、12トンではなく12フィートでした。でも重さはトン単位。

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  4. はじめまして。同じくアニメのネットラジオから本ブログにたどり着きました。
    現実を知ったうえでの妄想たくましい文章力を楽しく読ませていただきました。

    私は大阪在住ですが、今年のうちに(12月?)立川まで行って極地研究所を
    見学しようと思います。
    あと父がアルゼンチンからツアーで南極半島まで行ったことがあります。
    今はツアーでも南極大陸観光が盛んなのですね。

    監修はしっかりしているようなので、素人には説得力があり、
    現実を知っている方はフィクションとして楽しめるのでは、と思います。

    今頃、極地研究所が「聖地巡礼」の地になっているかもしれませんね。

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    1. T.K.さん、
      こんなブログを紹介していただけるネットラジオが心配です。ネットラジオなら聞けるので、そのうち聞いてみようと思います。

      >極地研究所を見学
      好きな時期に見学されるのも良いですが、極地研では8月ごろに毎年「一般公開」ということで一般向けに研究所内を公開する催しを行っています。その日に行ってみればさらに楽しめるのではないかと思います。また、一般公開では事前に申し込みの必要なツアーもあり、たとえばアイスコアが保管されている非常に温度が低い冷凍庫などがそれに当たります。これもお勧めです。

      >ツアー
      わたしが南極に行くきっかけとなった高校時代の講演で「南極に行くなら金持ちになるか研究者になるのが簡単」という内容があったのを覚えています。お金があればツアーで行くのは難しくないようです。わたしはお金持ちになるのが下手なので研究者になって南極に来ています。南極にツアーで行けるくらいの金が欲しいですね(金が欲しい wow wow)。

      >「聖地巡礼」
      一年くらい前には「タモリの番組で紹介されていた」と言って年配のご家族がいらっしゃっていましたが、それとは客層が変わりそうですね。
      ちなみに極地研には南極北極科学館という(小さな)科学館が付随しているのですが、そちらは日・月曜日が休館日なので巡礼の際にはお気を付けください。

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  5. 管理人さま、

    丁寧かつ真面目な(!)お返事ありがとうございます。
    アニメでは主人公がセルゲイと一戦交えた辺りです(勿論ウソです)。

    ネットラジオは
    http://www.onsen.ag/
    です。日本時間毎週木曜午後に更新されますが、昭和基地とは時差があるので
    気をつけてください。

    極地研究所の一般公開は8月上旬の一日だけのようなので、
    なかなか厳しそうです。私はサッカー観戦趣味があり、
    土日は大抵埋まってますので……。ましてインターハイの最中ですから。

    南極での貴重なお話、楽しみにしています。お体にお気をつけてください。

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Maira Gall