2017年11月21日火曜日

南極/南極の気温


 南極は地球上で最も寒い場所といわれています。



 上の図は山田がNHMという名前の計算モデル(*1)を用いてやっている予報計算(*2)です。別にこの図から何か言いたいとかではないのですが、ざっと南極の形状がわかるので掲載しました。図中、黒太線で表示されているのが南極大陸の外縁で、赤、青、緑の丸がありますが、これらはそれぞれS17H128ドームふじという日本の観測地点の場所を表しています。実はこの図には黒丸もあるのですが、赤丸とほとんど重なっていて見えません。(赤丸と被っている)黒丸の地点にあるのが南極観測隊の主要拠点である昭和基地です。
*1) 計算手法、プログラム。
*2) 天気予報のようなもの。実際の天気予報は、こういった計算を何パターンもやったり、何度も計算をし直したりしてから最終的な結果を出しているが、これは単純に一回のみの計算結果。

 この画像は→南極の気象予測のページにて掲載しているものです。現状このページはパスワードをかけずに、誰でも南極の気象予報の結果が見られるようになっています。
 余談ですが日本では気象業務法というものがあり、その中で第三章第十七条『予報業務の許可』については以下の通りになっています。

第一項 気象庁以外の者が気象、地象、津波、高潮、波浪又は洪水の予報の業務(以下「予報業務」という。)を行おうとする場合は、気象庁長官の許可を受けなければならない。

 これを破るとどうなるかというと、第七章第四十六条によれば、

第四十六条 次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
二 第十七条第一項の規定に違反して許可を受けないで予報業務を行つた者

となっています。

 つ、つまりこのページは違法……!? ついに両手に縄が!(*3
*3) 濡れ手で粟のほうが嬉しいのに。

 と思いきや、気象業務法は国内法。これで縛れるのはあくまで国内の予報に関する話。南極は日本どころか、どこの国でもありません。ゆえに、予報し放題。合法予報最高!*4
*4) なんで合法とつけるとこんなに脱法っぽさが出るのだろう。

 閑話休題。

 さて、→南極の気象予測のページの右下あたりに棒グラフと線グラフがありました。半日に一回更新されるこの結果が現在どうなっているのかというと、11月16日の時点ではこんなかんじ。


 これはあくまでモデル計算(すなわち観測ではなく計算)ですが、わりと観測結果と合っているものと思っていただいて良いと思います。

 上図では気温と降水量、下図は風速と風向を示します。各色は昭和基地/S17/H128/ドームふじを表し、各地点は左上や右上の図の丸が対応します。地図を見てわかるとおり、ドームふじのみ内陸(海岸ではなくもっと内側)にあるためより寒く、軸の値が違うことに注意してください。

 掲載した図の計算開始時刻は世界標準時(イギリスのグリニッジを中心とした時刻)で6時、昭和はUTC+03なので9時です(ちなみに日本はUTC+09なので15時)。横軸が予報開始からの時間を表します。

 グラフから値を読み取ると、黒い線で現されている昭和基地の地上気温は左の軸の内側(coast)が対応し、この期間はだいたい0〜-5℃くらいで変化しています。

 気象庁の過去のデータから日本のデータと比較してみましょう(ちなみに気象庁の過去データからは南極昭和基地のデータも習得できます)。
→気象庁 過去のデータ・東京20171年11月日毎の値

 東京の11月16日の気温は平均でだいたい10℃くらい。つまり南極は東京と比較すると10-15℃くらい寒い。
 これを聞いて、うわぁ! しゅごいい! この南極寒い! さすがターンAのお兄さん! と思う人はなかなかいないと思います。ちなみに札幌は同日平均1.9℃です。北海道とたいして変わらねぇのかよ南極。大したことねぇなぁ。おれならワンパンだぜ……と思ってしまう方もいるかと思います。

 現在11月の気温を見たときに、南極の昭和基地の気温が日本とそれほど変わらない理由は、大きくふたつあります。
 まずひとつは季節の逆転です。


 上の図はBaseline Surface Radiation Network (BSRN)という観測ネットワークの地点である舘野札幌昭和基地の2014年の月ごとの平均気温です。舘野という場所は一般にはあまり聞き覚えのない場所かと思いますが、茨城県つくば市の地名で、高層気象台があるため日本の気象観測では重要地点です。まぁおおよそ関東の気温を表していると思ってください。

 見ての通り、南半球にある昭和基地と北半球の札幌や舘野の気温の傾向はまったくの逆です。南極での11月はこちらでいうと5月相当。温かいのも当然で、南極はこれからどんどんと冬に向かっていくのです。上図では1月や2月は札幌のほうが寒いときがありますが、3月以降は大きく引き離されていくことがわかります。

 昭和基地があまり寒くないもうひとつの理由は、昭和基地が海岸(というより島)にあるということ。

 北半球の地表での観測で最も低い温度を観測したのはロシアのオイミャコンで約-71℃といわれています。このオイミャコンという場所、実は緯度は約63度と、北は北ですが、90度北極点に比べると大して北にはありません。それなのになぜ北極圏に比べて気温が低いのかというと、オイミャコンは十分内陸にあるからです。


 水というものは比熱(温度が変化しにくい能力)が非常に高く、簡単に温度が上がったり下がったりしにくい物質であるといえます。そのため、水の溜まった海に近い地点では、冬になっても気温がなかなか下がらないのです。 

 オイミャコンは海から遠く離れた内陸にあるため、気温の変化は大きく、冬は簡単に気温が下がります。一方で昭和基地は海岸にある基地であるため、温かい海の影響を受けやすくなっているというわけです。

 内陸へ登っていってドームふじの気温を見てみると-40℃前後となっており、「これぞ南極」と言いたくなるような寒さになっていることがわかるかと思います(*5)。
*5) 南極はその地形から内陸の高度が高くなっており、これも内陸の寒さの一因です。

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Maira Gall