2018年4月6日金曜日

隊員/多目的アンテナ越冬隊員の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は、

  • 南極での仕事 :何をするために南極に来たか
  • 南極に来た経緯:どうすれば南極に来られるか

に集約されています。


南極での仕事


 多目的アンテナの担当だが、現在は実質「単目的」アンテナで、Very Long Baseline Interferometer(VLBI; 超長基線電波干渉法)観測。VLBI観測は国際観測で他の観測地点と同時に超長距離の星から発せられる電波を観測し、各観測地点の位置の変化を測定する。昭和基地は南極での数少ない観測地点。

 また、本来の仕事とは関係ないが、通信や気水圏無人飛行機観測の手伝いも行う。ちなみに無人飛行機には特に必要ないが、飛行機免許を持っている。


南極に来た経緯


 多目的アンテナは毎年、勤めている会社から隊員を排出しており、社内公募。社内公募後の選定については詳しいことは話しにくい。

 社内公募は社内の人間なら誰でも応募できるものだが、無線の資格などが必要であった。今回は58次や60次と同時に採用されたため、2015年2月ごろに公募され、5月に決定された。

南極の感想


 寒い。






管理人より


 ここから越冬隊員の紹介です。全員紹介できたら良いなぁ。

 最初の紹介は多目的アンテナ隊員です。昔は「多」目的だったそうですが、現在はほぼ「単」目的アンテナ。昭和基地の東のほうに巨人用の黒いサッカーボールのようなものがあるのですが、それがアンテナのレドーム(覆い)です。
 現在唯一のアンテナの仕事であるVLBI観測は、本文中でも説明があるように、非常に遠くにある星から発せられる電波を地球のさまざまな地点でほぼ同時に受信することで、各観測地点の位置の変化を観測するミッションです。「ハワイは日本に徐々に近づいている」だなんて話を聞いたことがある読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、そうしたことがわかるのもVLBI観測の恩恵です。詳しい説明については国土地理院のページで解説されているので、そちらをご覧ください。
→VLBIとは|国土地理院(http://www.gsi.go.jp/uchusokuchi/vlbi-about.html)

 この方は多目的アンテナとは無関係に通信業務などにも出張しているのですが、気水圏(大気などの観測系)の無人飛行機の観測も手伝ってもらっています。管理人が気水圏担当の研究員なのでお世話になっており、越冬隊員トップバッターなのはそういう理由だったりします。ありがたやありがたや。操縦も通信系統もやってもらっており、この方がいないともう飛ばせない有様です。

 本文中にもあるとおり、飛行機免許持ちとかいうわりと意味わからねぇスペックです。大学の頃にカナダで取ったそうで、国際民間航空機関(ICAO)という国際協定に入っている国なら、国土交通省に申請して免許書き換えをすればその国で飛行機を飛ばせるとのこと。
 なぜ飛行機免許を取得したのか訊いてみましたが、返答は「かっこいいから」でした。

 それと、この方もブログをやっています。最近よりもい関係の記事を書いて大量に訪問者が増えたとのことなので便乗して宣伝しておきます。

→第59次南極地域観測隊 越冬隊員の記録(http://jare59.starfree.jp/index.htm)


2018年3月23日金曜日

観測隊/生活諸係

 ここのところだいぶん記事の更新間隔が空いています。

 とはいえこのブログ、仕事ではなく、片手間の趣味でやっているもの。更新が少ないということは仕事に集中して時間が取れなかったということで、きっと良いことなのでしょう。でなければロマサガ2(*1)をやっていたせいかもしれません。
*1) フリーシナリオで知られる25年くらい前のRPG。ロマンシング・サガ2。七英雄をぶった切る。最近サガシリーズは佐賀とコラボしたらしいが意味がよくわからない。

 サガシリーズは実はほとんどやったことがなかったのですが、今回プレイしたことで、
「アリだー」
「流し斬りが完全にはいったのに……」
「ワグナス! 梅酒を漬けたぞ!」
などの元ネタがわかるようになりました。流し斬りは結局覚えずに終わりました。パーティーは最終皇帝/ネレイド/イーリス/サラマンダー/モールでした。あれ、これテンプテーション見切らなくて良かったんじゃ(*2)。
*2) ロックブーケ戦では全員女性で行けばテンプテーションを喰らわないが、そうすると最終戦で困るという初見殺しを回避したはずだったが、亜人は性別不明なのでテンプテーション見切り不要で、皇帝も精神防御で回避できてしまった。

 とまぁそんな南極生活なのですが、南極には余暇を楽しむものが種々様々あります。それらはいろいろな分類ができるかと思いますが、ひとつ大きな分類で括ろうとしたとき、公式に設定されている/されていないという枠組みをひとつ作ることができます。
 公式に設定されている余暇の楽しみ——それが生活諸係です。今回はそんな越冬隊の生活諸係に関するお話になります。

 まず生活諸係とはなんぞやという話から。
 生活諸係というと、小学校の「はいぜんがかり」「いきものがかり」「さかなくしょん」といった係活動を思い浮かべるかもしれませんが、おおよそそのイメージに近いかもしれません。ただし生活諸係は仕事ではありません。

 生活主任からの通達によれば、
 生活諸係の目的は、越冬生活に潤いを与え、心身のストレス発散の一助とし、その様々な活動が昭和基地という社会の潤滑油となり、隊員一人ひとりの越冬生活を支える重要な組織活動である。
ということです。

 今回の第59次南極地域観測隊では、以下の14の生活諸係が存在しており、越冬隊員ひとりひとりがこの中のうちのどれか3-4つに所属しています。

  1. 新聞係
  2. アルバム係
  3. 図書・教養係
  4. イベント・スポーツ係
  5. シアター係
  6. ソフトクリーム係
  7. バー係
  8. 農協係
  9. 漁協係
  10. 工房・ミシン係
  11. 理髪係
  12. ビール・醸造係
  13. アマチュア無線係
  14. 喫茶係

 最初に述べた通り、生活係は仕事ではなく、余暇を楽しむためのものです。しかしながら公式に認定されている活動で、生活主任が存在し、月末には観測部会、設営部会のあとに生活部会も開かる真面目なもので、予算も配分されます。

 それぞれの係の概要は以下の通りです。

新聞係
 その名の通り、新聞を作成する係です。毎日一枚、主として前日の出来事などを書いた新聞を掲示板に掲示します。


 この係のみやや特殊で、新聞係のみが新聞を作成するのではなく、越冬係全員が持ち回りで一日編集長となり記事を書くことになっています。昭和基地の蔵書を調べると第13次(1970年代)から全員参加型の新聞があったようで、どうもその頃からの伝統のようです。


アルバム係
 その名の通り、帰国後のアルバム作成に向けての写真撮影が主な活動ですが、それ以外にも隊員からの応募を募ったフォトコンテストを開催したりもします。

 本来なら最近の写真コンテストの入賞作品をここに転載するべきなのでしょうが、そうするとたぶんこのブログが消されることになってしまうのでやめておきます。


図書・教養係
 図書・教養係はその名の通り、昭和基地内の蔵書を管理するのが仕事です。昭和基地には先人が残していった図鑑、伝記、学術書、隊次作成の新聞、小説、漫画など様々な書籍が存在しています。


 それ以外に、隊員同士で互いの仕事内容を知るための職場訪問や、南極大学といった行事の運営も行います。第一回の職場訪問はちょうど明日(24日)に行われる予定です。


イベント・スポーツ係
 誕生日会やスポーツ大会などといった、さまざまなイベントの企画運営を行う係です。


 ブログ掲載用の写真を整理していたらイベント係関連でわりとやべー写真があったので、安全なスポーツ大会(先日のドッジボール大会)の写真でお茶を濁しておきます。


シアター係
 映画の上映を行う係です。書籍と同様、DVDも昭和基地にはたくさんあります。たまにTwitterで感想を呟いているのはシアター係の映画上映のものです。

 伝説によれば古代のいやらしいビデオもあるという話ですが、規格が合わなくて見られないかもしれません。


ソフトクリーム係
 ソフトクリームを提供する係です……この説明要る?


 ちなみに砕氷船しらせでもソフトクリームは提供されていました。写真はしらせ内での看板。左上のは指。


バー係
 基地内のバーの運営をする係です。


 今次のバーの店名は『五九楽亭』。基本的に週に一度オープンし、係の人間がエイヒレを炙ったり、シェイカーでカクテルを作ったりしていますが、それ以外にも悪い大人たちが毎日のように「自主バー」と嘯いてバーに赴いています。ちなみに最近は日本酒とウィスキー飲みすぎにより、ついに調理から制限令が発令されました。


農協係
 基地内で野菜を育てる係です。南極で植物を育てることについてはいろいろと縛りがあるそうで、あらかじめ申請したもの・場所でのみ育てることができるようです。


 作った野菜は調理担当へと回され、食事の材料になります。南極では生鮮食品は貴重です(実際、そろそろ生のキャベツや白菜等は終わりになっています)。特にもやしは1週間程度で育つので、既に何度も収穫され、食卓に上っています。


漁協係
 釣りを行う係ですが、他の係よりも目的意識が強いかもしれません。この係の最大の目的は「ライギョダマシ」という南極海に住む巨大魚を釣り上げることです。


 現在基地内に貼られているライギョダマシの魚拓の最大のものは57次隊の157cm。小柄な人より大きいくらいのこの怪魚を釣り上げるには釣竿ではなく固定設置の器具を使うらしく、海氷が安定する時期に向けて今から準備をしています。


工房・ミシン係
 DIYを行う係です。南極ではちょっとしたものでも買い出しに行くわけにはいきません。なのでものづくりを行ってくれる係は貴重で、観測や設営活動の中でもお世話になる係です。

 必要な物資や服の裁縫のほか、今次では夏隊見送りの横断幕も作成しました。 


理髪係
 昭和基地内には風呂場(梅の湯)の隣に理髪室があり、ここで調髪を担当するのがこの係です。


 係担当の隊員たちは事前に髪を切るための講習を受けてくるそうです。自分も既に一度切ってもらいましたが、そのときの担当者は「指を切るのが上手い」ということでした。


ビール・醸造係
 アルコール醸造を行う係です。

 日本では酒造りは認可がないと違法(でもビール酵母とかその辺で売ってるのだよね)ですが、ここは南極。脱法酒は作り放題ですぐへへ。でもまだ作成には至っておりません。


アマチュア無線係
 アマチュア無線による活動を行う係……なのですがアマチュア無線がそもそもよくわからないので、今度日本けん玉南極支部長に取材に行くときに具体的に何をするのかを訊いておきます。


喫茶係
 昭和基地内のバーの昼の顔が喫茶店です。今次の店名は『純喫茶 舟木(仮)』。


 喫茶のみならず、調理の助けを受けて菓子の提供も行っています。ちなみにバーの酒が枯渇しつつあるのと同様に、喫茶ではコーヒーが枯渇しつつあり、こちらも調理から制限令が発令されています。


 以上が生活諸係でした。改めて見直すと、酒が枯渇しつつあるバー、コーヒーがなくなりつつある喫茶とわりと世紀末なのでそろそろマッドマックスしないといけないかもしれません。





2018年3月12日月曜日

隊員/気水圏夏隊同行者の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は、

  • 南極での仕事 :何をするために南極に来たか
  • 南極に来た経緯:どうすれば南極に来られるか

に集約されています。


南極での仕事


テーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』に関連した、砕氷船しらせ船上でのエアロゾル観測機器の保守点検および観測。
また、自分の観測としてガイガーカウンターの放射線観測、太陽アナレンマ(同じ時刻の太陽の位置を追っかけていくと位置が徐々に変わる現象)の観測、空の色の観測。


南極に来た経緯


学部のときの指導教官が前次隊の夏隊で参加しており、そのつてでテーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』の担当者から、2016年12月に今次隊の参加者を探している旨のメールがあり、二つ返事で引き受けて参加することになった。

南極の感想


一言では言えない。
昭和は想像以上に監獄だ。





管理人より


 二人目。大学院生です。若いねー、とか言いだしたらおっさんなので気をつけてください。でも若いとほんとに元気だよな。うむ。カメラが好きなようで、なんか高そうなカメラ&レンズを持っており、観測用にカメラを持ってきたカメラ初心者の自分はいろいろと教えを請いました(でももう忘れた)。

 前回の→気水圏夏隊同行者の場合と同様、彼とも一緒に野外に出かけました。ちなみにこの記事はそのときにインタビューした内容が元だったりします。

 来た経緯については非常にわかりやすい部類で、大学のときの指導教官が南極観測の関係者だったのでしぜんと観測隊に繋がったパターンです。大学生・大学院生で南極に行く場合はほぼこのパターンなのではないでしょうか。ただし大学→大学院のときに学び舎を変え(理系ではよくある)ていて、現在の指導教官ではなく前の教官、というのはちょっと変化球かもしれません。

 ちなみに感想の「想像以上に監獄だ」ですが、えっと、二夏の狭さについて言及しているのか、トイレすら過酷な二夏のことを言っているのか、はたまた二夏のことなのか、いったいどれのことなのでしょう。

2018年3月10日土曜日

観測隊/夏の過ごし方


 日本に戻るまでに続刊や新作が発売・再開されないだろうと予想したものとして、

  • Mount&Blade 2(*1)
  • Hunter x Hunter(*2)
  • 氷と炎の歌(*3)

があったのですが、Hunter x Hunterは早くも連載再開して続刊が出ていました。予想を外したぜ。Mount&Blade2も予定通りなら発売されるらしいし、これは氷と炎の歌にも期待せねば。頼むぞ、マーティン。
*1) 盗賊に出会ったら「金ならないが鉄ならあるぞ」と言って斧を振り回せば良いと教えてくれるRPG。スタジオが小規模。
*2) どん兵衛を送ると描くらしい。
*3) 海外ドラマ『Game of Thrones』の原作。最新刊は2011年の『A Dance with Dragons』で和訳『竜との舞踏』発売はその2年後。ちなみに前刊『A Feats for Crows(乱鴉の饗宴)』からは6年ほど間が開いているが、今回は『舞踏』からすでに6年以上開いてしまった。


 さて、例によってまったく関係のない話題で入ったようでいてまぁ関係ないのですが、『氷と炎の歌』の主人公らスターク家の標語といえば「冬来たる」ですが、昭和基地ももう冬です。夏隊はすでに帰路につき、最近は装輪車(キャタピラではない、普通のタイヤをつけた車。昭和基地ではトラック)も片付けられてしまったわけですが、今回は今更ながらに昭和基地の夏生活のタイムスケジュールを書いていこうかと思います。


 まず、夏期間の隊員のタイムスケジュールは以下のようになっています。


  • 朝食 0700-0745
  • 朝礼 0745-0800
  • 午前作業 0800-1145
  • 昼食 1200-1300
  • チーフ打ち合わせ 1240
  • 午後作業 1300-1830
  • 夕食 1845-1930
  • 全体ミーティング 1930
  • 入力 2000-2200


1) 朝食 0700-0745

特に何の解説も必要なさそうなところですが、落とし穴が。0700-0745という時間表記になってはいますが、実際はほとんどの人が7時頃から朝食を食べ始めます。7時45分には朝礼が始まってしまうことや、朝食の後片付けの手間があることなどを考えると、時間ギリギリに朝食を摂るのは得策ではありません。三食とも一夏の一階食堂で摂ることができます。

 朝食に限らずですが、夏期間の食事は砕氷船「しらせ」の海上自衛隊員が調理をします。この調理ですが、大部分の材料はどうやら野外に出るチームの糧食と同じ材料を使っているらしく、「どっかで見たことあるな」というものから、「なるほどこうやって料理するのか」というものも出て来ます。


2) 朝礼 0745-0800

朝礼ではやることは、

  • ラジオ体操
  • 本日作業内容確認

です。

 朝礼でのラジオ体操は建設現場では比較的一般的らしいです。朝礼は設営の建設担当隊員が中心となって行われ、体操のあとの作業内容確認では、大まかな作業内容や注意点、作業人数などを全体の前で報告します。ここではほかに、当直がその日の夕食を発表したりもします。


3) 午前作業 0800-1145

ここから本格的に作業が始まるわけですが、夏期間の作業というと大きくわけて2種類に分けられると思います。すなわち、研究か設営かです。


 →観測隊/観測構成の記事でも見た通り、隊長・副隊長および同行者を除いた隊員は、観測部門と設営部門に分けられています。

 観測部門というのは研究者のほか、気象庁の職員やモニタリング隊員(常設されている観測装置を扱う隊員)が含まれる部門です。
 一方で設営部門というのは、機械や建設土木、電気などといった観測基地を保つための作業を行う隊員が所属する部門です。医療や調理担当も、この設営に含まれます。


 設営分野はその担当者が複数いるのと同様に多岐にわたりますが、夏期間の設営の主役といえば建設作業で、それに関わる隊員やしらせからの支援の海上自衛隊員もいます。しかしながら忘れてはいけないのは、設営作業の主役は設営担当ですが、設営隊員のみが行うわけではないという点です。


 もちろん、南極での主たる活動は研究観測です。資源はなく、というよりもあっても条約で縛られていて採取できず、ただ寒く、薄暗く、見捨てられたような極寒の大地を好き好んで訪れる理由といえば、研究のための観測以外にないのです。もはや冒険家の時代は終わり、ただ南極に立っているだけでは誰も誉めそやしはしないのだから当然です。

 しかしながら、あらゆることどもよりも観測活動・研究活動が優先させるかというと、それはまた別問題。なぜならば、日本の南極観測隊が最優先としているのは「越冬成立」だからです。研究の前には生きていかなければなりません。研究の前に生きなくてはいけないし、観測の前にそのための場所を確保しなければならないのです。


 そういうわけで、設営作業には手の空いている研究隊員も参加します。この場合の「手の空いている」というのは「ただちに行わなければならない作業がない」という意味になります。

 わたしは一般観測研究の隊員で、夏の期間は野外(主に→南極/S17)に出ていた時期が長かったのですが、昭和基地にいた時期は設営作業に参加し、生コンクリートを引き摺り下ろしたり、バケツのバケモノみたいなものをブラシで擦ったり、鉄筋を、こう、なんだ、このクルクルっていうやつで、こう、アレしたりだとか、そういうことをしました。ちなみに設営作業に参加するとシールが貰えます。


 なお午前は10時ごろ、午後は15時ごろに「中間食」と呼ばれる時間があります。菓子パンや缶コーヒーなどが配られる、ようはおやつタイムです。寒冷の気温や重い作業の中において、甘味で安らぐのは重要です。


4) 昼食 1200-1300

お昼です。昼食と同様、早めに食べてしまいます。


5) チーフ打ち合わせ 1240

夏期間は毎日、基本的にふたつのミーティングがあります。そのうちのひとつがお昼に行われるこのチーフ打ち合わせです。名前からは各チームの首脳陣が集まるような仰々しい会合に見えますが、実際は食堂の椅子か床に座って行われるこじんまりとした打ち合わせです。

 内容としては当日の打ち合わせではなく、翌日の作業内容の確認となっており、この中で人員や車両の調整が行われます。


6) 午後作業 1300-1830

午前作業と同様です。中間食は15時ごろにあります。


7) 夕食 1845-1930

夕餉は朝食や昼食に比べると時間通りに食べるパターンが多いです。これは午後作業が思いの外、長引くパターンがあるせいかもしれません。

 ちなみに夕食後にビールが配布されたりもしますが、夏作業の間は夕餉の間に酒を飲むことはできません。


8) 全体ミーティング 1930

毎日行われるミーティングのうちの二つ目です。昼のミーティング(チーフ打ち合わせ)はすべてのチームがそれぞれ報告する形でしたが、こちらの全体ミーティングでは何か用件がある隊員/チームのみが発言します。


9) 入浴 2000-2200

入浴可能な時間はさほど長くはなく、この2時間のみです。洗い場は4つありますが、4人が入れるほどの広い浴槽ではありません。そのため、入浴時間帯には風呂場の前の洗面所付近で空くのを待ってたむろしている隊員の姿が見られることが多いです。


 以上が夏の昭和基地での日程となります。夏の過ごし方としては以上です。

2018年3月1日木曜日

隊員/気水圏一般観測研究夏隊員の場合


 この[隊員]ページ第59次南極地域観測隊の隊員のうち一部に個人的にインタビューをし、纏めたものです。個人の詳細については深く立ち入らず、内容は

  • 南極での仕事 :何をするために南極に来たか
  • 南極に来た経緯:どうすれば南極に来られるか

に集約されています。



南極での立場

一般観測研究(気水圏)の夏隊員。

南極での仕事

テーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』に関連した、砕氷船しらせ船上でのエアロゾル観測機器の保守点検および観測。
自分の観測としてエアロゾルインパクターを用いたエアロゾルの粒径ごとの存在の観測。


南極に来た経緯

2017年3月にテーマ『全球生物科学的環境における東南極エアロゾルの変動』の担当者から公募があり、闇会員となっているエアロゾル学会からのメールで公募の存在を知った。公募には期間や業務内容などが詳しく書いてあった。
実際に応募してみると、他に応募者がいなかったせいか、面接・試験等は特になく、すぐに採用されたものの、南極に行っている間の仕事を休むための手続きで5月までかかった。


南極の感想

予想以上に天候や気象条件が厳しく、想像していたよりも天候に左右される部分が多かった。
それと、こんなに料理をすることになるとは思わなかった。





管理人から


 一人目。(今回の観測隊の中では)平均ちょい若めくらいの年齢の方です。夏隊員なので現在はしらせ乗船中で帰還中。ちなみにこの記事を載せていいかと許可を取りにメールを書いたら、律儀にしらせ船内の状況も報告してくれて面白かったです。「表面上はとても平和です。僕が知る限りはですが」とか。

 大学はエアロゾル関係(南極で行った観測内容)を学んでいたそうですが、現在はそれとまったく関係ないお仕事をやっています(*1)。それなのに観測隊に参加することになったのは、学会の「闇会員」だったからか。いちばん大変だったのは観測隊への参加ではなく、いかにして仕事を休むかだったようです。
*1) ちなみにエアロゾルというのは大気中の微粒子のことで、いろんな種類のものがそこらへんに浮いているのだけれど、日本で特に話題になるのは黄砂。

 S17に一緒に観測に出かける機会が多かったのですが、ご飯当番に指名されてしまったがために毎日メニューを考え、ご飯を作ってくれました。家ではほぼ料理はしないそうです。

 南極に来た理由に「奥さんから逃げてきた」と冗談めかして言っていましたが、えー、なんだ、これで終わりです。



2018年2月25日日曜日

観測隊/昭和基地


 音泉で行われている『宇宙よりも遠い場所』通称『よりもい』のウェブラジオで本ブログが紹介されたそうです。おい大丈夫か大丈夫か。

→ラジオ 宇宙よりも遠い場所~南極よりも寒い番組~
 (http://www.onsen.ag/yorimoi)

 聞いてみたらすごいまともなブログみたいに宣伝されてた。Wow……。
 最初に「南極でバレンタインとかあるのかな? ( >д<)<ヘップバーン」という話がありましたが、こんな具合でした。


 ちなみに今回の越冬隊の女性はひとりのみで、スイスからの交換科学者に「コテコテ」という日本語を教えた方です(夏隊を含めると女性隊員はもっといますが)。

 さて、『宇宙よりも遠い場所』でふと思い出したのですが、小学生のときからの友人(*1)から例年のごとく忘年会(というか一緒にご飯食べて飲むだけ)の連絡が来ていたので、新年明けてから連絡を返しました(ザ・遅い)。い、いや、いちおうネットが使えるようになったのがその頃ようやくなので、連絡が間に合わなかったというかなんというか。
*1) 友だちいたのか。

 ともかくとしてそのときのやりとり。


《相手》  |  《管理人》

30日の夜暇?(*2)
*2) 12/20の連絡。
すまん、今南極(*3)
*3) 01/03の返答。こういう人間相手に友人関係を続けているから相手がすごい。
まじか
まじ
ペンギンとかそのへんに落ちてる
14ヶ月後くらいに帰るぜ
すげーな
来年もいないじゃん
おうよ
そういうわけで年末返事できなくてすまん
来年もいないぜ
■■がいない間に、子供産まれるわ(笑)来月予定。
網走で流氷は食ったから、違うお土産頼むわ!
まじか
うむ





 いや、この年齢(*4)になると結婚したとか子どもが生まれたとか逮捕されたとか珍しくないのですが、こうカウンターパンチ的に来たからね? もう研究とかどうでもいいね?
『宇宙よりも遠い場所』、通称よりもいの放送が始まったそうですが、宇宙よりは遠くても結婚よりは近いよな、南極(*5)。
*4) ギリ二十代。
*5) ブログタイトル変えることがあれば『結婚よりも近い場所』になると思う。

 例によって導入で薪割りダイナミックしましたが、今回は昭和基地に関するお話です。


昭和基地の歴史


 まずは歴史から。昭和基地はおよそ60年前の初代南極地域観測隊によって設立された基地です。
 日本南極地域観測隊について、詳しくは

→観測隊/日本南極地域観測隊の歴史
(http://jare59.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html)

をご覧ください。

 該当記事にもあるとおり、1956年11月8日に晴海埠頭を出港した53人の初代南極観測隊を乗せた宗谷は1957年1月20日に定着氷縁に接岸。
 同月29日にはここから東へ進み、東オングル島に上陸。このときにこの地点が「昭和基地」と命名されました。
 当時の技術の結集であるプレハブ住宅の資材が持ち込まれ、2月には無線棟・居住棟・発電棟などの4棟が完成。初の南極観測隊にも関わらず、越冬観測を開始することができるようになりました。


昭和基地の位置


 昭和基地は南緯69度00分、東経39度35分の位置に存在します。ここはリュッツォホルム湾と呼ばれる湾の中のオングル諸島にある東オングル島という島内です。
 この領域はタイムゾーンがUTC+03(世界標準時より3時間早い)で、UTC+09(同様に9時間早い)の日本からすると、6時間だけ遅れていることになります。たとえば日本が12時のとき、昭和基地はまだ6時です。

 下に南極大陸と昭和基地付近の地図を示します。


 上の地図だと昭和基地が海の上に浮いているように見えますが、えーなんだこれは、地図解像度のせいか。pythonのmatplotlibで描いているのですが、pythonでBasemapのfullより解像度高い地図があったら教えてください。

 描画するのは厳しいので手近にあった地図を載せるとこんな具合となります。


 広く領域をとった地図なので詳細がわかりにくいですが、基本的に隊員が生活している場所はAエリア(黒枠で囲われた場所)の北側半分となっており、居住施設として後述する一夏、二夏、管理棟などはすべて北側半分の中にあります。


昭和基地の様子


 自分の場合、昭和基地を見て最初に抱いた感想は「基地だ」でした。基地です。そう、基地なのです。


 露出した岩、そびえ立つアンテナ、走り回るトラック、建設途中の構造物——夏の時期なれば、雪は沢や海に視線を向けなければ見ることはできません。


 南極を体験したことのない者が想像し得ない昭和基地というこの場所は、少なくとも夏の間は雪と氷に包まれた静謐な空間ではないのです。力と技の風車が回る、砂と岩と鉄筋と生コンの空間なのです。


 こんな砂埃で咳き込む昭和基地ですが、標高は約29mで海面は近く、夏はしばしばペンギンの姿を基地近くで見かけることができます。


主要な建物


 最初は4棟しか存在していなかった昭和基地の建物ですが、隊次を重ねるごとに建設が進み、現在では68もの建物が存在しています。そのうち、主として居住空間となる場所と、今回の59次隊夏作業で外観が完成した基本観測棟についてここで紹介します。



第一夏期隊員宿舎



 一夏と略されることが多い建物ですが、「レークサイドホテル」という愛称も持ちます。

 1979-1980年(20-21次)で建てられ、のちに2000年(41次)で増築された建物ですが、未だ現役。

 高床二階建てで、48のベッド(一部屋4ベッド)を持ち、60名が入れる食堂の機能があります。また、風呂や水洗便所も備えており、夏隊の主要生活空間となります。


第二夏期隊員宿舎



 二夏と略されますが、こちらも「ヘリポートホテル」という愛称も持ちます。

 1990年(40次)で完成、翌1991年(41次)で増築されました。高床の建物で、40のベッド(一部屋2ベッド)を持っているほか、伝説によれば2箇所のサロン、および便所があると言い伝えられています。

 まずサロンですが、下記のようなスペース。


 哀愁漂いますね。カイジで出てきそう。
 そして便所は赤丸で囲ったここ。壁にはポリタンクに漏斗を設置したものがあり、ションポリと呼ばれています。これは外というのでは。


 風呂も洗面所も水洗便所も食堂もないため、それらが使いたければ前述の一夏に行くことになります。1部屋は2人で使いますが、二段ベッドのほかは畳一畳より小さなスペースがあるだけです。「起きて半畳、寝て一畳」という文句を思い出します。

 ちなみに風が強く地吹雪になって視程が下がると、外出注意令や禁止令が発令されることがあります。禁止令の場合は建物の外に出られなくなるため、このときに腹が減っていた場合はサロンに置かれているいつのものかわからないあっいや……これ3年前に賞味期限切れてる……いやまぁいいか……な食料を食べるか、坐禅を組んで無の境地に至ることで空腹を抑えることができます。



管理棟および第一居住棟、第二居住棟、倉庫棟


 一夏・二夏が夏隊員の生活空間だったのに対し、こちらは越冬隊員の居住空間です。これらは通路棟で連結されています。

 管理棟は1991-1992年(32-33次)に建てられた3階建ての建物で、厨房・食堂・医務室・娯楽室・図書室・通信室・風呂・便所・理髪室・バーなど、生活するのに必要だったり必要なかったりする機能を持ち合わせています。


 第一居住棟、第二居住棟は管理棟と通路で繋がっており、どちらも高床二階で21人が寝泊まりできます。

 居住棟の部屋は一夏・二夏とは違い個室(*6)で棚や机があり、収納スペースもあるため、初めて入ると「こ、これが棚! すごい! 物が入れられる! この机っていう道具はなんて発明だ! 膝の上で物を書かなくても良いんだ!」と感動することができます。
*6)ただし壁は薄い。


 倉庫棟も同じく管理棟に連結された建物で、鉄骨二階建て。冷凍庫と冷蔵庫、設営事務室、倉庫、ジム・喫煙所などがあります。1995-1996(36-37次)に完成しました。




基本観測棟


 2016年(57次)から建築が進められていた建物で、現在最新の建物となります。

 高床の二階建てで、気象・地圏・電離層・生物といった主要な観測が行えるほか、便所もあるというハイスペック施設です。便所!(*7)
*7) 吹きさらしにならない、ポリタンクでもない便所だ! すごいぞ!

 今回(59次)の夏で外側の建設が終了したため、上棟式が行われました。


 神主や巫女が現れて祝詞を詠みあげたり、お神酒を飲んだほか、最後にはお菓子(当たり付き)がばらまかれました。自分は雪上車のキーホルダーと気象庁のシールをゲット。キーホルダーは嬉しいけどシールは要らなあっいやなんでもないです。

2018年2月16日金曜日

南極/S17


 2月になりました。

 もう月も半ばになってなっているというのに何を言っているんだハハハこやつめと思われる方もおられるかもしれませんが、時差というやつです。

 また二、三週間ほど更新が滞っておりましたが、べつに飽きたとか、ゲームやっていたとかそういうわけではなく、いやでもPS vitaがあるからゲームはやっていて、でもゲーミングノート持ってこなかったのでPCゲーはほとんどできないのですよね。
 自分の(日本で)持っているノートはラップトップというには少々重いノートなのですが、たしか『Hitman: Blood Money』(*1)が旧PCが動かなかったときに買ったやつなのでインディーズ程度ならプレイできる程度のスペックはある。ちなみに今の(本土に置いてきた)PCは『Divinity: Dragon Commander』(*2)が動かなかったときに買ったやつ。買った時期がわかりやすい。次は日本に戻ったあと『Mount&Blade2』(*3)のときかなー。でもM&Bはグラボよりメモリが大事だとか噂されていたし、メモリ増設か入れ替えるだけで十分かもしれない。
*1) ハゲバーコード(バーコードハゲではない)の暗殺者が明らかに目立ちすぎる変装をしているのに誰も気づかないことにツッコミを入れる変装ステルスアクション、その最高傑作とも謳われる4作目。スーツケースに爆弾つけて投げるのが好き。
*2) エルフ・ドワーフ・トカゲ・アンデッドから嫁を選ぶ恋愛シミュレーション。ゴブリンの嫁はゲーム開始時前に自爆している。
*3) 管理人がPCゲー5指に挙げるRPGの次作。兵となり、将となり、戦国乱世の大陸を駆け抜ける。絵面がわりと地味なので良さを示すのが難しい。

 越冬中時間があるので、ゲーミングノートを持ってきていれば宙ぶらりんになっていた『Vampire: the Masquerade -Bloodlines-』(*4)でもやれば良かった。
*4) TRPGのVampire: The MasqueradeシリーズをCRPG化したもの。Tremeraの血液魔法Thaumaturgy関係とSeduction型でやっていたが、HDDがクラッシュしたあと環境を戻すのが面倒で手をつけていなかった。周囲の敵を吐血させるPurgeが勢いあって好き。

 例によって、こうやって南極に純粋に関心のある方を全力で切り捨ててからの切り出しですが、えー、何が書きたかったんだっけ、ああ、そうだ、なんで更新していなかったかという話でした。観測のため、基地の外に出ていたためです。

 第59次南極地域観測隊の本隊は11月末にオーストラリアを出港後、12月終わり頃に昭和基地に到着しました。その後、(南半球の)夏期間の観測や設営作業を行い、2月1日付で越冬交代式を行いました。
 未だ完全に「越冬成立」と言える段階ではないのですが、少なくとも南極の短い夏は終わりを迎えてしまっています。
 冬来たる。
 しかしながらその前に、短い短い夏があり、そこでは夏にしかできない観測が行われていたのです。わたしは夏観測として、主にS17という観測地点に行っていたのです。

S17とは

まずS17の位置を確認してみましょう。



 上の図は南極大陸のおおよそ全域を表したもので、昭和基地があるのは黒縁取りの赤丸で示した場所です。この規模だとわかりにくいため、昭和基地周辺を拡大したものがその右の図になります。

 見ての通り、昭和基地(黒縁赤丸)が大陸から僅かに離れた東オングル島という島にあるのに対し、S17(赤丸)は南極の内陸にある観測地点です。グレースケールは(氷床を含む)地表面高度を表しており、ほぼ海面と同じ高さにある昭和基地と違い、S17はいくらか高いところにあるのがわかります。

 昭和基地から東に約20km、標高約600m。基地からヘリコプターでおおよそ10分程度のこの地点は大きく分けて二つの役割を持ちます。


1) 観測地点として
 昭和基地は海上の島に存在しており、その風景は夏場はさほど南極めいていません。全景を見渡してみると、確かに海には海氷が浮き、陸には雪が尾を引いていますが、むしろ目立つのは青銀色の雪や氷ではなく土気色の露岩であり、通行するトラックや建築中の建物、ヘルメットを被って歩く人々も手伝って、基地という名前にむしろ相応しいくらいであるといえます。

 一方でS17はといえば、内陸のそこにあるのは雪と氷ばかりです。



 内陸とはいっても斜面のほんの端ですが、昭和基地とはまったく違う世界が広がっているというのは身体で体感できます。
 S17にはふたつの小屋が存在し、片方が居住棟、もう片方が発電棟となっています。発電棟(および接続された居住棟)からは日本で一般に使われるような100V電源が取れるため、天気さえ許せば日本と同様の観測が行うことが可能です。



2) 航空拠点として
 S17の拠点小屋から東に覗ける位置に、雪面に線が入っているのが見えます。近づいてみると、それは幅50m長さ1kmととても太く、周囲には家紋のように三つの穴の空いた黒い旗が立っているのが見えます。

 これはDROMLAN(DROnning Maud LANd)飛行機のための滑走路です。11月末に出発する本隊よりも一ヶ月先駆けて出発する先遣隊は飛行機で南極入りしますが、彼らが最初に降り立ち、そして2月に帰還するときにはこの滑走路を使うのです。



S17の設備

-発電棟
 風下側にある発電棟はその名の通り発電を担う小屋です。前室には外で使う旗竿などが置かれていますが、そこからさらに入ると中央に大きな発電装置があります。この発電装置は隣の居住棟で人が生活している時期にのみ稼働しています。普通に暮らしている限りでは、燃料は(余裕を見て)約3日程度で給油することになります。

 発電装置は暖かくなるため、造水装置としても用いられます。造水装置というと大袈裟ですが、バケツに綺麗な場所の雪を取り、発電装置の上に置いておくだけです。半日〜1日程度で雪は融け、水を作ることができます。雪だけだと熱が伝わりにくいので、多少水を溜めておいてその上に雪を入れると多少効率が上がります。


 奥には扉が3つあり、いちばん右は倉庫のような扱いですが、残りの2つの個室はトイレとなっています。といっても、電気はあれど水が流れるわけがないので、水洗なわけがなく、汲み取り式でもありません。野外ではペールトイレという腰掛けられる缶のような形状に上蓋が付いたものを利用し、ここにゴミ袋をセットして大便は足します。

 一方で小便は外の風下に旗を立て、そこにします。寒いです。さむい。


 発電棟の上部には気象庁設置の気象計が存在しています。ここには風力発電装置も取り付けてあり、発電小屋の装置が稼働していなくても気象観測測器は稼働し続けることが可能です。このデータはあくまでヘリコプターや飛行機の利用のために用いられることが多く、昭和基地の観測とは違って一般向けにデータは公開されていません。


-居住棟
 風上側にあるのが居住棟です。前室を抜けた先が居住棟のメインスペースとなっており、広さとしてはわたしが引き払ってきたアパートの部屋より広いくらいとなっています。

 入口から見て右手手前のスペースは循環型の暖房装置となっており、零下の外気温の中でも居住棟にいれば普段着で過ごすことが可能です。

 右手奥には台所があります。IHクッキングヒーターが備え付けてあり、電磁調理を行うことができるほか、グリル、トースター付き電子レンジ、冷蔵庫など、一般的な台所よりむしろ高性能な設備が備えられています。

 左手側には長テーブルがふたつくっつけられて置かれており、食事や休憩をすることが可能となっています。また、小屋内に宿泊する場合はこのスペースに布団を敷いて寝ていました。


S17の環境

先に地図で見たように、S17は昭和基地と違って大陸斜面上にあり、近くに熱源である海がないため常時雪と氷に包まれています。斜面上に存在するため、カタバ風と呼ばれる斜面を駆け下りてくる風の影響を受けやすく、日中の一部を除けばほとんどの時間帯で東方向から風を受け続けています。風速は昭和基地よりも秒速で5m程度強く、10-15m/s程度の風は珍しくありません。

 南極は沿岸では陸上や海氷上ではペンギンやアザラシや鳥類が、海面下では魚類やプランクトンなどが見ることができますが、大陸斜面上のS17では夏の期間であっても生物を見る機会はほとんどありません。しかし稀ながら、尾に黒い線の入った白い鳥が飛んでいく姿を見ることができます。


S17の今後

S17は観測拠点として用いることができるのみならず、DROMLANによる飛行機利用のための拠点として用いることができる非常に有用な拠点です。

 長期的な利用を目指し、雪の影響を防ぐために高床式のようになっていたうえにジャッキアップによって床を上げることが可能となっていはずの本拠点ですが、長期間の利用により、高床だった頃の面影はもはやなく、雪に埋もれつつある状況です。果たして本拠点はいつまで使うことができるのでしょうか。このままでは沈んで行くばかりのS17を救うのは……そう、金です。よろしくお願いします。




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Maira Gall