極地研広報室より、『「ブログを読み書籍執筆を依頼したい」と光文社から連絡が入ったので対応せよ』という旨のメールが来る。やっと罠にかかったか、と小躍りする。
へっへっへ、こんなことがあろうかと思ってブログをやっていたのだよなぁ。ひっひひぃ金だ金だ印税だ。
いろんなところに話したいなぁ! と思うものの、途中でポシャったら恥ずかしいし、そもそも詐欺かもしれないということで必要な範囲(所属している研究所)以外ではできるだけ口外せずに、水面下で編集と連絡を取る。だって光文社って、森博嗣の『ZOKU』くらいしか買ったことないからぜんぜん知らないし、ほんとに出版社なのかぁ?
初サバトで村長が来る。
「我が名はバ☝️フォメット! この世界の支☝️配者となる者だ!」
めっちゃ前向き。めっちゃ高笑い。めっちゃ唇ツヤツヤ。
ここで何の脈絡もなく、本のタイトルを『凍てつき村の心臓歌』にしようと決める(のちに変わる)。
編集から参考資料として、光文社新書として発刊されている、
- ・『宇宙飛行士選抜試験』
- ・『雲を愛する技術』
- ・『土』
- ・『辺境生物探訪記』
- ・『バッタを倒しにアフリカへ』
この中で最も記憶に残ったのは『宇宙飛行士選抜試験』で、「南極観測隊と比べるとなんて真面目に試験をやっているんだ……」と感じ入る。南極観測隊なんて、
「行く?」
「へぇ」
で終わるぞ。
長野駅MIDORIビル内タリーズで編集者と打ち合わせ。平日だったが、ちょうどこの月の頭に休日の観測があり、代休が取れていた。
大学4年間はドトールコーヒーショップでアルバイトをしていたため、かなり慣れ親しんでいるのだが、それ以外のコーヒーチェーン店にはかなり親しみやすさの違いがある。比較すると、
■ドトール
我が家のような安心感。ブレンドは安くて美味い。しかし二杯目安くなるとかはないので、あまり長居には向かない。
あまり解説することがないので日替わりの「本日のコーヒー」について解説すると、これはブレンドではなく、単一種の豆を使ったコーヒーなので、味にかなり差異がある。ブレンドというのは「良い感じに混ぜた」コーヒーなので、単体の豆だと尖る。あまりコーヒーの品種に拘らないが飲んでみたい、という場合はブラジルサントス(サントスNo.2)のような味のバランスが整った豆のときにチャレンジするか、炭火コーヒーのようなブレンドのときに試すのが無難であろう。
■ベローチェ
安い。昔(ドトールのブレンドSが200円だった時代)はブレンド170円だか180円だった。
大学時代は近くにはなかったのでほとんど行く機会がなかったが、立川では駅前にベローチェがあり、しばしば利用した。立川のドトールは比較的席の間隔が狭いという印象なのだが、ベローチェはどうかというと別に言うほど広くもない。すまん今褒めようと思ったんだけど「よく考えると広いわけではないな」と思ってしまった。
ただなんとなくひとりでだらっとWiFi使う場合は気安いというか、等身大の座りやすさがある。もっと薄汚いと嬉しい。
■タリーズ
なんかたまに生えてくる店という印象。タリーズ行こうと思って行ったことがない。これまで近くにはなかった(けど学会や出張で行くとたまにある)からかもしれない。
長野では駅前などにあり、急激に行く回数が増加したが、タピオカとか出しているのでもしかすると最先端の人間以外は入ってはいけないのかもしれない。フードメニューを頼んでみたいが、試したことがない。
■サンマルクカフェ
ちょこくろ、うまい。
■ミスタードーナツ
立川には駅前や立飛にあるのでしばしば行っていた。しかしどうしても行くと食ってしまう。いやドーナツ屋だからいいんだけどさ。昔、中華メニューが好きではあったが、ここ20年くらい食べてない気がする。なんで子どもの頃はあんなに好きだったのだろう。今はオールドファッションが好きです。あと抹茶のやつ全般。
■星乃珈琲店
内装がレトロで良い。メープルシロップ好きなのでスフレパンケーキが美味いが、あまりこういうもの食べていると健康診断で引っかかりそうな気がする。普通にコーヒーも飲んでいるはずなのだが、パンケーキのせいでまったく印象が残らない。
■上島珈琲店
札幌で一度だけ行ったことがある。カップが好き。内装も好き。しかし近くに店がない。
■珈琲哲学
甲信越〜北関東中心のチェーン。近くにあるので利用しているが、アイスコーヒーを「愛す珈琲」と表記するのはいかがなものかと思う。よくピザを焼いているのがみられるが、コーヒーとケーキ以外注文したことがない。四人以上の席が多いので、ひとりで占領するのは申し訳ないなぁと思いつつ面の皮が厚いので占有している。
■エクセルシオール
高いドトールだということは知っているが、何度か行っているにも関わらずよくわかっていない。貧民が行くと上流階級に睨まれそうで怖い。
エクセルシオールとはまったく関係がないのだが、立川のエクセルシオールと同じビルに入っている大戸屋で飯を食っていたときに、異様に世間離れしたお嬢(ゴスロリという意味ではない)っぽい人が隣で食べていたので、あれは深窓に住んでいるけど株主優待で食いに来た人、という解釈をすることにした。
■スターバックス
日本では行ったことがない。おしゃれ族が徘徊しているので、たぶん入口で結界に弾かれると思う。
海外だとチェコとアメリカでなら行ったことがある(複雑な工程を踏んで生まれたハイソ感を出しています)。なんとかふらぺちーのにんにくましましーの的なのではなく、カフェラテ頼んだら普通に出てきた。なんだ楽勝じゃねぇか。しかし日本ではまだチャレンジする気になれない。WiFiが飛んでいるという伝説がある。
タリーズは慣れ親しんでいない部類だったし、タピると喉がオカらせそうだったので特に難しい注文はせず、普通にアイスコーヒーで店に3、4時間ほど居座った。
久しぶりに喋りすぎて、翌日喉が痛くなり蜂蜜レモンのど飴を購入した。
とりあえずおおよその方針が決まり、この日から真面目に執筆を開始する。
南極観測は国の事業なのでいろいろと規制があって、そういう規制があるということ自体はわかるのだが具体的な規制がよくわかっていない。越冬中もブログをやっていたが、かなり曖昧でふわふわした感覚でやっていた。
出版本って極地研に見せなきゃ駄目なんだっけ、とよくわからなかったので極地研の広報室に問い合わせてみたところ、概ね、
- ・帰国後のことなので当人の判断で行動して問題ない
- ・発行後一部送ってもらえると嬉しい
当人の判断でということは……つまり、何書いても問題ないということだな。ふむ。
打ち合わせの際に「とりあえずできているところだけでも見せてもらいたい」ということを言われたので、とりあえず1週間ほど使って夏時期の観測(第1章)について半分ほど書いた2万9千字を編集に送る。
今回の出版はブログの書籍化というのが近いが、光文社noteを見てもらえばわかるとおりほぼ一から書いた形になっている。というか、もともとブログで書いたような内容も盛り込んでいたのだが字数の都合で大半が消えた。
書き下すにあたっては、
- もともと公開していた文章(ブログ)
- 書いていたけど公開していなかったもの(記事にならなかったメモ、日記、記録など)
- 新たに書き下ろした物
の合算で、1と3についてはわかりやすいが、2は何かというとブログにしようとしてネタだけ出していたものもそうだが、越冬中にいろいろとメモを残していたのでそこから捏ねあげたものもある。メモは絵入りでなんだこの絵は。
車両隊員や気象隊員にずんどこずんどこ(茶々を入れられるときの擬態語)言われていた絵だけど、絵を見るとパッと見何を考えていたのかがわかり……いやそうでもねぇか。なんだこの絵は。
しかしこの手の絵は描いておくと記憶を思い出すという点では非常に有利で、当時考えていたこととかを思い出しやすくなる。
問題は描いてた時点でろくなこと考えていないから、その記憶を思い起こしても書籍に使えるのは一部分で、結局観測隊の公式記録を見直して最終段階で直したりする。
59次隊のアルバムが間違って一冊多く郵送されてきたので返送したのだが、庶務隊員から「届いた。最近子どもと人狼ゲームをやっている」という旨の連絡が届く。そういえば昭和基地のバーに『汝は人狼なりや』のカードセットがあったので、紹介したような。
ちなみに自分がやっていた人狼は単純なクローンではなく、一種のヴァリアント(派生作品)であり、
- ・人狼・狂人の職業被りあり(つまり、人狼や狂人は職業ではない)
- ・初日全員強制CO(もちろん人狼などは職業でないのでCOしない)
- ・狩人GJで人狼狩人両者死亡
- ・村人襲撃時、相方に人狼の名前を遺す
- ・長期村は通常通り1日が1日で進むが、短期は1日が1時間で進み、3-7時間ぶっ続けでゲームする
公益財団法人日本極地研究振興会から依頼されていたシリーズ「南極観測隊員が語る」第10回が公開される。
シリーズ「南極観測隊員が語る」第10回|紅は黄茅白葦に在っても隠れなし
http://kyokuchi.or.jp/?page_id=8869
「何を書いても良い」と言われたものの、南極にいた頃に書いた(ブログ以外の)寄稿はたいてい検閲喰らいまくって原型がなかったので、「今回もどうせ修正喰らいまくるんだろうなぁ……」と思っていたのでてきとうに書いたら直されたのは段落くらいだった。おかげで「魔女の乳首」「キャッキャッキャロム、キャロキャロム」といった文言が残ることになってしまった。
特に解説求められなかったから書いていなかったが、タイトルは「黄茅白葦(痩せた土地)」と「紅は園生に植えても隠れなし(突出した人物はどんな場所でも目立つ)」を組み合わせた造語なのだけれども、特に意味はなくてただ白・黄・紅で昭和基地のキャロム・ビリヤードの球の色を表しているだけだったりする。
月に一度程度メールで文通していた59次夏隊の隊員から、
- 「腰が絶不調」
- 「仕事は落ち着いてきたが、仕事以外のことを考えるまでにはいたっていない」
返信で「本を出す予定です。出たら5兆冊くらい買ってください。」とクソデカ冊数を書くと、「5冊は書います」と無難な返信が帰ってくる。
まともに勝負しても売れる見込みがなさそうなので、
「速水螺旋人に挿絵描かせようぜ」
と提案してみたところ、編集側から
「メジャー級の漫画家は原稿料が高そうなのでやめておこう」
というようなことをやんわりと言われる。おいおい、まともに文章で勝負することなんてやめてガンガン投資していこうぜ? サタスペみたいなノリでいこうぜ? 生きててよかった!
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